中年探偵銀次〜残された暗号A〜-1
(刑事が呼びにきやがった。一瞬、ドキッとしたが、どうやら俺だけじゃなくて全員らしい…大丈夫だ…あの探偵は俺の罠に気付かない…)
「刑事さん、いったい何なんですか?こんな時間に全員を呼び出して…」
店長の柏木の問いに、正彦が答える。
「犯人がわかったんですよ。竹井千亜紀さんを殺した犯人がね…」
「それで、いったい誰が…?」
「いやあ、それが俺にはさっぱり…こいつがわかったっていうもんですからね。なぁ、銀次?」
全員の目線が銀次に注がれた。
「あぁ…犯人がわかった。犯人は、あなた方従業員の中にいる。」
「いったい誰何でしょうか?」
「まぁ、待ってください。柏木さん。順をおって犯人をいいますから…」
(犯人がわかっただと?貴様じゃ無理だ…貴様じゃ俺を捕まえられない。)
「えぇ、まず、みなさんが思っているとおり、犯人は、神宮寺晃と松本勇の2人にしぼられる。外部からは鍵が無いと不可能ですし、他のみなさんのアリバイはどう考えても完璧です。それに動機があるのもこの2ですしね…。」
全員が神宮寺晃と松本勇の2人を見たが2人は全く周りを見ようとしなかった。
「えぇ、では現場に残れていたダイイングメッセージについてだが…数字だけの暗号ってのは、結構限られるんだ。できるものとして平仮名の順番、電話のボタン、英語のアルファベットなどにな。まぁ、今回の場合は、最初と最後に‘1’という文字があることから、アルファベットの確率が高いとわかる。実際にやるとわかるが、他のは、どう考えてもおかしいからな。」
銀次の言葉に、正彦はダイイングメッセージを解き明かそうとしていた。
「ってことは、書いてあったのが…『1・11・9・18・1』だから、1が‘A’っつわけか。そうなると…そうか!!『1・11・9・18・1』の意味はアルファベットで‘AKIRA’!」
正彦の発言と共に、全員が神宮寺晃をみる。
晃はその言葉に驚きを隠せないのかおどおどとしている。
しばらくの沈黙のあと、正彦が神宮寺晃の前に立った。
「神宮寺晃、殺害の容疑で所まで来てもらおうか…」
正彦の言葉に晃は、後退りしながら答える。
「お、俺じゃない…俺はやっていない…」
「その話は所で聞こうか…」
晃の手を掴み、手錠をかけようとしたその時、しばらく黙っていた銀次がそれを止めるかのように言葉を発した。