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忘れ得ぬ夢〜浅葱色の恋物語〜
【女性向け 官能小説】

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罪作りな優しさ-8

「ほんまええ友だちなんやな、敦子さん」ケネスが腕組みをして言った。
「ああ。ほんまにな」
「今でも毎年年賀状よこしてくる、あの敦子さんやろ?」
「そや。結婚して姓が変わっとるけどな、『桜木』に」シヅ子はおかしそうに言った。「学生時分から毎年欠かさず年賀状送ってくれはる」

「おかあちゃん、やっぱ神村さん野性的なとこもあったんか? オスやった、言うてたけど」
「ゴムつけんと、直接わたしに種を注ぎ込んだんが一番やな、やっぱり。自分の子孫を残す、っちゅう野生のオスの所業やろ? 言うたら」
「そやな。確かに」
「それ以外は完璧な紳士やった」
 ケネスはカップを口に運びながら、シヅ子を上目遣いで見た。
「わいがどうしても解せんのんは、おかあちゃんが、そうやって神村さんに避妊させなんだこと。彼との行為の時は一度も避妊してへんのやろ? 何とも思えへんかったんか?」
 シヅ子は顔を曇らせ、うつむいた。「わからへんねん。未だにわからへんねん」
「わからんことあるかいな」
 シヅ子は顔を上げた。「ほんまにわからへんねん。もしかしたら妊娠するかもしれへん、てなこと、いっこも思わんかった。あの人との行為の時は、これが当たり前なんや、て思てたような気がすんねん」
「当たり前て何や」ケネスが反抗的に言った。
「それでもあの人も、毎回毎回わたしの中に遠慮なしに出してたわけやなかったんやで。そら、ゴム使うことは一度もなかったけどな」
「そうなん?」
「そらそうや。敢えて危険日にそないなことしたら、まるであの人の子を産みたい思てるみたいやんか」
「毎週ホテル通いしとったんやろ? その度にエッチしとったんやないんか?」
「ゴムこそ着けへんかったけど、わたしが危険日の時は、抜いて腹の上に出してはったんやで」
「行為の間は直接繋がって盛り上がっとったんやろ? 最後に出す時だけ抜いても意味ないねんで」
「わかっとる。わたしもずっと後になって知ったわ。興奮してくると、精子が漏れ出るんやろ? 弾ける前でも」
「その時はおかあちゃんも神村さんもそれで大丈夫、思てたんやな?」
「思てた」

 シヅ子は手をテーブルに置き、思い出すような目をして言った。
「初めての夜は9月の終わり。10月は二週間に一度の土曜日。11月に入ってからは毎週デートしとった。平日は全くそんなことはなかったで」
 ケネスはカップを口に当てたまま、横目でシヅ子を見た。「それから関係が終わるまでずっと毎週抱き合うてたっちゅうことやんか」
「わたしはな、あの人と二人でいることに満足しとった。別に身体を気持ちよくさしてもらうためだけにつき合うてたわけやない」
「わかります」マユミが躊躇いがちに言った。「女性って、心理的な満足感があれば十分、ってことですよね」
 シヅ子は頷いた。「二度目にあの人から誘われた時も、始めは一緒に食事をしよう、ちゅうことやったんや。そやけどあの人も男やし、それだけでは済まんかったわけや」
「なるほどな。わかるわ。わいも男やから」
 ケネスは少し気まずそうにマユミをちらりと見た。
 マユミはくすっと笑った。

「それからも食事したらホテルに直行、っちゅうあからさまなデートやなかってんで」
「映画も観たりしてたんやろ?」
「それでも一回だけや。映画一緒に見たんは。偶然、っちゅうか皮肉にもアルバートの好みとだぶってもうたけどな」
 シヅ子は視線をテーブルに落とした。
「その夜は激しかったわ。恋愛映画っちゅうのんは刺激的であかんわ」
「遠慮なく何べんも中に出されたんやろ? その時は」
 シヅ子は申し訳なさそうに小さな声で言った。「まあ……安全な日やったしな」

「わたしな、言い訳にしか聞こえへんやろけど、あの人とのエッチをいっつも望んどったわけやあれへん。あの人の腕に抱かれて眠るだけで気持ちようなって満足しとった」
「そやけど、神村さんはそうはいかんかったんやろ?」
「男やからな。そやからそんな時は仕方なく相手しとった」
「拒絶したら、これからもう抱いてくれへんかも、とかなんとか思てたんか? ひょっとして」
「それはあったな。あの人が望んどる行為を拒絶したら、もうわたしは捨てられるんちゃうかな、って不安になっとったのは事実やな」
「もうそんだけおかあちゃんも神村さんに惚れてたっちゅうことなんやろな」
「いっそ拒絶してあの人に捨てられとった方が良かったかもしれへん」
「いや、そう簡単にはいけへんやろ」
「なんでや?」
「神村さんもおかあちゃんにぞっこんやったんやろ? エッチを拒否されたところで、簡単に浅倉シヅ子を手放そうやなんて思わへんで。おそらく」
「そやな……そうかもしれへんな」
 シヅ子は申し訳なさそうな目をケネスに向けた。

「そやけど、そないして仕方なく相手してても身体はやたら反応するねん。あの人と一つになったとたん、燃え上がってしまうねん」
「テクニシャンやったんか?」
「そういうわけやあれへん。どっちか言うとワンパターンで淡泊な感じや。比較するようなもんやないんやろけど、アルに比べたらずっと不器用やった。あの人のやり方、っちゅうより、道ならぬ行為をしとる、っちゅう思いが、身体をむやみに反応させてたんやろな。初めての時から身体は敏感に感じて弾けまくったからな」
「よう言われるわな、禁断の恋ほど燃え上がる、ちゅうて」
「まさにそれや。その通りやった」


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