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忘れ得ぬ夢〜浅葱色の恋物語〜
【女性向け 官能小説】

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罪作りな優しさ-4

「その封筒にはいくら入っとったんや?」ケネスが訊いた。
「5万円や」
「5万!」ケネスはびっくりして大声を上げた。
「神村さんが仰った通り、それで診察受けられたんですか? お義母さん」マユミが言った。
 シヅ子は首を横に振った。「そんなことせえへん。エッチの後お金もろたりしたら、まるで風俗嬢やないか。あの時は神村さんの勢いに負けてとりあえず受け取ったけど、ちゃんと返したで、そっくりそのまま」
「いつ?」
「わたしが年末に大阪に帰省して、年が明けて一旦向こうに戻って身辺整理した後、最後にバスに乗る直前、あっちゃんに頼んだ」
「直接手渡しはできませんね。確かに」
「そらそうや。あの人がすんなり受け取るわけあれへん」
 シヅ子はまたカップを持ち上げた。

「わたしがあっちで最後に話したんは敦子やった。いろいろ心配してくれて、支えてくれた親友やからな」
「神村さんとは?」
「形式的に他人行儀なあいさつだけやった。職場に最後の挨拶行った時な」
「ま、そんなとこやろな」
「もうなんか、公然のことになっとったみたいでな、わたしとあの人の関係。周りの目が冷とうて」
 ケネスは飲みかけたコーヒーのカップを口から離した。「ほんまに?」
「いや、被害妄想っちゅうか、わたしがそう思てただけかもしれへんねけど、やっぱ気持ち的にあの職場の中で二人だけで話し込む勇気なんかあれへんかったで」

 シヅ子はゆっくりと言った。「あの人とはそれっきりや」

 ケネスはコーヒーをすすった。「で、敦子さんとはどないな話、してん」
「わたし何度も謝った。心配してくれてたのに、ちょっとも言うこときかへんかったし。でもな、あっちゃんにこにこ笑いながら気にしないな、言うてくれた」
「ほんとにいいお友達ですね」マユミが言った。
「思えばあの子がおったから救われてたんかもしれへん。神村さんとの不倫を続けるうちに、なんや自分が職場の中で孤立していくような気がしとったから。ま、それも被害妄想っちゅうもんやけど」
「その時敦子さんに頼んだんやな? 返金」
「そや。もうわたしあっちゃんに何もかも白状したわ。泣きながら洗いざらい全部、白状したわ」
 シヅ子の瞳に光るものが宿り、シヅ子は指でそっと目頭を拭った。



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