IMITATION LIGHT-1
…いつか本物の光に。
『IMITAION LIGHT』
「もう潮時なんだ」
と、思い始めてからもうだいぶ時が経っている。
一つ季節が変わって。
それでも未だこの人の傍に居たいと思うあたしは馬鹿なんだろうか。
絶対に報われることはない。
いつかは別れなくてはいけない。
傷は浅い方がいい。
別れは少しでも早い方がいい―…
あの人に完全に染まってしまう前に。
未だ恋はいくらでも出来る。
もっといい人は居るはず。
あたしだけを想ってくれて、あたしだけの傍に居てくれる人が―…
はぁ…
ため息を一つついて。
この重苦しい空気から逃げるためにベランダに出る。
都会の光は夜でも眩しいくらいで。
どの建物にも人は居るのに。
「なんであの人なのよ…」
そう、
なんであの人じゃないといけないの。
こんなに人はたくさん居るのに。
会社でも、大学や高校の時の友達でも。
男はたくさん居るじゃない。
ぼーっとしながらそう考えていて。
遠くで聞こえる車のクラクションでふと我にかえる。
フッと自嘲して。
「まさかあたしがこんな詩的なこと考えるなんてね…」
そう呟いて。
再びその人工的な光たちを見つめながら。
「虚しいね…」
虚しい。
あたしも。
あの偽物の光たちも。
体だけでいいなんて、なんで考えてしまったの。
はじめに想いを伝えた時。
なんで諦めることができなかったの。
あたしの方を振り向かないと分かっていたのに――…
本物の光は今も彼の元で輝いているのだろうか。
所詮、本物の光には適わないんだ。
…はまると深い。
もうかなり深い所まで行き着いていて。
抜け出すことは難しい。
諦めることはとても難しいことで。
偽物の光じゃもう駄目だから。
「言わなきゃ…」
この決心が揺らいでしまわないように。
この涙とともに流れてしまわないように。
深く深く心に刻み込んだ。
…あたしにもいつか、本物の光が差し込むのだろうか。
その時は、
あたしもその人にとって本物の光で居たい―…