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美しくも儚い・・・
【悲恋 恋愛小説】

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美しくも儚い・・・-1

今がずっと続けばいいのに。
そうしたらずっと一緒に居ることができるのに。
あなたと―――・・・



『美しくも儚い・・・』



「・・・ん・・・」

あたしは朝の眩しい光で目を覚ます。
カーテンは閉めていない。
「真っ暗だと寝れないからな」が彼の言い分。
重たい上半身を持ち上げて。
その彼のほうをふと見遣るとまだ起きてはないらしく規則正しい寝息をたてていた。
その茶色い髪に、触れる。
精一杯の愛しさを込めて。
想いを込めて。
その叶わない想いを―――

ハァと、小さな息を漏らす。

ため息じゃない。
悲しいからじゃない。
悔しいからじゃない。
嫌気がさしたわけでもない。
・・・ただこの関係がいつまで続くのかと、そう思っただけだ。
いつまであたしはこの人を想っていられるのだろうと。
いつまでも一緒に居たい。
そう思う反面、この関係にケリをつけたいと思う自分もどこかに居て。

「潮時、かな・・・」

もう一回、その髪に触る。
「どうしたらいいのよ」と。
パタッとシーツに音を立てて落ちた涙は染みを作って。
彼の髪を触る手が、震えた。
目の前が涙で霞んだ。
彼が起きる前に赤い顔と目をどうにかしなきゃ・・・
そう思って洗面台へ向かおうと彼に背を向けたその時。

「起きてたの?」

彼の声。
あたしは背後の彼に「うん、顔洗おうと思って」と答える。
心なしか声が震えた気がした。
このまま背を向けて進んでしまえば顔を見られることはない。
あたしはそれだけを言い放って洗面台へ向かう。
そこに辿り着き鏡に顔を映すと。
酷い顔・・・
鼻は赤く、目も充血している。
洗面台の淵に両手を掛け、うなだれてハァとため息をつく。
今までもこんなことはあった。
けれど、こんなにタイミングよく彼の目が覚めたことはなかった。

「・・・どうした?」

うなだれたまま彼の声が耳に入る。
背後からだ。
でも今顔をあげてしまったら顔が鏡に映る・・・
そんなことを考えていると、背後から抱きしめられて。

「泣いてたんだ・・・?」

そう言われて「うん」とは言えないあたしは黙りこくったまま。
「どうして?」と優しく聞かれても何も言うことなんてできない。
「本気で好きになってしまったんです」とか、
「彼女にしてください」とか。


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