王-6
「長谷川さんが『多少過激な』官能小説を読んでいることは
誰にも言いません。誓って」
「・・・・で?」
「過激なセックスシーンのページに折り目がつくぐらい読み込んでいることも
誰にも言いません。誓って」
「・・・・で?」
「こんな過激なセックスをしたい願望があるのかも、なんてことは
誰にも言いません。誓って」
「・・・・で?」
こいつ・・・
何が王子よっ!
「だから、僕と、この本のようなセックスをしませんか?」
はぁぁぁぁ?
何言ってんの?
「こーゆーのは、本で読むからいいのよ」
「試したこともないのに?」
「・・・・」
「どうせノーマルなセックスしか経験ないんでしょう?」
「・・・・」
「長谷川さんはこーゆーセックスがしたいって相手に言えないタイプですもんね」
「・・・・」
「長谷川さんが感じたことのないような世界かもしれませんよ?」
「・・・・」
興味がないと言ったらウソになる。
でも、こんなセックスをしたいとは誰にも言ったことがない。
私のゆるんだ手を見逃さずにネクタイを私の手から抜き取った。
きっちりとネクタイを締めなおして
今までの爽やかな王子の笑顔とは全く逆の笑顔で言った。
「俺と、この本のようなセックスをしませんか?」
この男は王子の仮面をかぶった悪魔だ。