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THE 変人
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進藤瀬奈として。-1

 「幸代、悪いな。いつも瀬奈と遊んでもらって。」
外回り中、いつも瀬奈を気にかけて会ってくれる瀬奈に海斗は感謝した。
 「いいんですよ。どうせ何もすることない暇人ですから。それにもう瀬奈ちゃんは友達。海斗さんの為とかもう思ってないから気にしないで下さい。」
棘があると言えば棘があるようにも聞こえるが、今の幸代からはそんなものは感じられなかった。最近の幸代は随分とシャレが判るようになったし社交的になった。従来美人ながらも陰気くさかった雰囲気はガラッと変わった。社内の男性からも気さくに話しかけられるようになった。
 「お前、最近男から人気あんじゃん。」
幸代はニコッと笑う。
 「私ってやっぱモテるんだなぁって再確認しました♪」
 「再確認??ハハハ!って事は元々思ってたって事か??」
 「まぁね〜!フフフ」
照れの混じった笑みに可愛らしさを感じた海斗。仕事一筋でつまらない女だと思っていたが、最近の幸代には女としての魅力も感じられるようになった。海斗は嬉しく思う。
 「でもね、瀬奈ちゃん、たまにふと考え込んだ様子で表情が曇る時があるんですよね〜。何か心配事でもあるんですかねぇ。話しかけるとすぐにニコニコするんだけど…」
ちょっとした隙に見せる瀬奈のそんな様子を気にかける幸代。しかし以前よりもずっと笑うようになったし明るくなった。その心配が杞憂で終わる事を信じている。
 「まぁ考え事ぐらいあるだろ。そう簡単に過去の嫌な事は忘れられないだろうよ。」
 「そうですね。」
幸代はそう言って窓の外を見る。
 (海斗さん私の事、どう思ってるんだろ…。他の男と話してるの見て何も思わないのかなぁ…。社員の誰かと付き合っても何も思わないのかなぁ…。)
瀬奈を通して随分海斗との距離が縮まったのは確かだ。しかし男と女としての距離は全然縮まっていない現実に溜息が出る。
 「どうした?溜息ばかりしてると幸せ逃げちまうぞ??」
 「じゃあ幸せ運んで下さいよ。」
幸代は無意識にそう言ってしまった。
 「は??どう言う意味??」
幸代は少し焦りながら答える。
 「な、何でもないです。」
体ごと動かし窓の外に顔を向けた。
 幸代はどうにもならない現実に、例え仕事中であろうとも二人きりで車で出掛ける事をデートだと思い自分を納得させていた。毎日毎日寝る前に海斗とデートしている妄想をしている。海斗とデートしたらどんな一日になるんだろう、意外と優しいかも、寒かったらそっとコートをかけてくれるかな…、最後にはホテルに誘われて…、我慢できずに車の中で…、最終的には海斗に抱かれている妄想をしているうちに我慢出来なくなりオナニーしてしまう。幸代はすっかりオナニー癖がついてしまった。
 幸代の妄想力は膨らむ一方だ。こうして外回りしている途中でも、もしいきなりホテルに誘われたらどうしようとか、人気のない場所で昼寝している途中にいきなりスカートの中に手を入れられたらどうしようとか、ついついいやらしい妄想ばかりしてしまう。きっとホテルに誘われてもスカートの中に手を入れられても、きっと拒まないであろう。それ程に海斗への思いは膨らむ一方なのであった。
 いつも瀬奈と遊んでいる時に、自分が妄想している事を体感しているであろう瀬奈が羨ましく思える。しかし瀬奈は敵ではない。八つ当たりする事はまずなかった。嫉妬すべき相手に嫉妬できたなら何て楽だろう、いつもそう思う。しかし幸代には瀬奈を嫉妬の対象にする事は不思議とできなかった。海斗と瀬奈を混同して考えるのはやめようと決めていたからであった。


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