笛の音 3.-4
片脚を外したスカートを握って、せめて溢れてしまう蜜がかからないように引き避けつつ、脚を小刻みに震わせて極まる声を上げる有紗の耳元に、
「きもちいい?」
と有紗を心地よくさせることができた嬉しさに満ちた声が聞こえてきた。
「あっ……、はっ……」有紗は上体を直樹に凭れかけて、「……き、きもちい……、あ、直樹……、ね、……い、いっちゃいそう……」
正直に答えると、ますます直樹が指に寵を込めてくる。多少ぎこちなくとも、恋情が技巧を越えて惜しみない愉楽へと浸してくれた。
「な、直樹っ、……キ、キス、……して、やっ、はやくっ……」
「ん」
ねだるともう一度深く舌が入ってきて、口内の奥に届いた瞬間に有紗は果てていた。瞬間脚の間から物凄い音が聞こえたが、それもこれも直樹への愛しみがあるからで、誤魔化したり隠したりせず、直樹の目の前で彼の体に包まれる浮遊感を手放しに堪能した。そんな有紗の絶頂の余韻を長引かせるように、直樹の唇が頬や耳元に添えられてくる。麗しい唇が肌に触れる度に、愛しみが伝わってきて体が痙攣を起こした。
「んっ、……は、……すっごいきもちいよ、直樹……」
「うん、有紗さん、めちゃくちゃ濡れてる」
直樹が二本指をまだ奥まで埋めたまま、背を反らして突き出したようになっている有紗のバストへキャミソールの上から奮いついてくる。衣服越しであっても、中で敏突していた乳首を探し当てられ、柔らかい膨らみに顔を埋めるようにして舌を押し付けてきた。ブラの中で弾かれ、擦れる度に有紗の体が跳ね、直樹の指を締め付けてしまう。
「……や、直樹、ツ、ツバ……」
「うん、ごめん……、でも、こうしたい」
キャミソールの丘陵の頂点に唾液のシミが広がっていく。中の肌に生温かい潤いが染み込んでくる。汚いとは思わない。彼の分泌する滴が身に貼り付いてくることすら幸せだ。体が波打って腹筋で上体を支えていられなくなり、再びベッドの上に仰向けになると、直樹の唇がバストを追って吸い付いてきた。
「エ、エロいよ、直樹……」
「……、っ……、んっ、……好きなようにして、いいんでしょ?」
「そ、そう……、……だ、だけど、さぁ……」
下着の中で乳首がもげ落ちそうなほど硬くなって、前へ引っ張られているようなもどかしさが、双乳だけではなく手足の先まで伝搬し、下腹が力んで媚壺に挿し込まれた指を締め付けてしまうと、
「すごい動いてるよ、中」
そう耳元で囁かれた有紗は真っ赤になって握りこぶしで直樹の肩を叩いた。
「ばか……、直樹が、エ、エロいこと、するからでしょっ……」
「俺のせい……?」
「そうだよ。……直樹の、せい……」
キャミソールにたっぷり唾液を染ませた直樹がバストから顔を離し、有紗を覗きこんできた。直樹の顔が視界に入っただけで、有紗は彼の頭を引き寄せて唇を開き、舌を吸って欲しいと誘ってしまう。飽きるほどキスをしても、すぐにまたして欲しくなる。
「有紗、さん……」
「ん……?」
「も、もうガマンできない」
回答を待たず、指がヌルリと引き抜かれた。手首まで蜜が垂れているのが垣間見えて顔を熱くした有紗の片足から漸くスカートが脱がされていく。そしてそのまま有紗のショーツの両サイドへ手がかけられて、
「またっ、私だけ脱がす……。直樹も」
と、目を細めた有紗は彼のジーンズのボタンを外し、先に直樹のブリーフを引き下ろそうとした。
「……ん、あ、ちょっと、待ってっ……」
腰をカクッと跳ねさせた直樹が、有紗の手を振り払って自分でジーンズとブリーフを下ろしていった。
有紗はわざと大きな舌打ちを聞かせた。
「ちょっと。……なにそれ」
「え……」
「なんかいま、バッ、って手、払われたんだけど?」
「だ、だって」
シャツを着たままで下だけ丸裸になった姿。ソックスも履いている。普通ならば情けなくて格好悪いと思おうものだが、あの高潔な男茎がシャツの裾からヌッと突き出て、最早辛抱ならないほどに張り詰めた先端から、ずっと漏らしていたのであろう透明の汁を噴き出しているのを見ると、有紗は内心、直樹に拝礼したいほどの喜びに包まれていた。
「……怒った、私。帰ろっかな」
「や、やだよ。ここでやめるなんてっ」
「じゃ、何で私に脱がさせてくれなかったの?」
もちろん有紗は気づいている。目を反らし、顔を赤くして黙りこくった直樹の前で、寝転んだまま彼によって途中まで脱がされていたショーツを美しい脚から抜き取る。「ねー、なんで?」
「……うっ、し、知ってるだろっ、有紗さん」
「んー。……言ってくれなきゃさせてあげない」
「……」
「直樹……」有紗はそっと脚を閉じた自分の下腹に指を添えた。「んっ……、私、早くしたい……」
クチュリ、と指を秘割に当てがって太ももを擦り合わせると湿音が漏れた。たまらなくなった直樹が、
「で、出そうだったから。……こ、擦れて……」
覆いかぶさってくる。羞恥に耐えて皆まで言ってくれた直樹のために、指を少しだけ押し込み剥いた包皮の上からクリトリスを撫でて甘ったるい喘ぎを聞かせてやってから、
「じゃ、早くしよ……? 出すなら私で出してほしい」