接して漏らさず-2
2.
この表でも明らかなように、年を取れば、回数が落ちてくる。
猥談の最中に課長が割り込んで来たな。
未だ40台の課長は、「君たちには回数じゃ叶わんが、中身が濃くなって来てなあ」とニヤニヤとしていたな。
定年間近い同僚が、「ああ、今夜も義理マンかあ」と言って、猥談はお開きになった。
セックスはもちろん、回数が多ければいいと言うわけではないんじゃな。いみじくも課長が言ったように、中身が問題じゃ。
計らずも義理マンといった初老社員のように、60台で早くも女房のお相手に疲れ果てる者もおる。これでは、とても仙人の域に達することは無理じゃな。
知り合いのパレスチナ人から聞いた格言。
Use it or lose it.
「使わなければ駄目になる」
セックスの99の話をしたら、教えてくれた。
けだし、金言といわねばなるまい。
最近はセックスレスが増えているそうじゃな。
友達の熟年女性が
「だって、結婚するのは、セックスがしたいからじゃないの」
と言ったのを聞いて、顔が輝いて見えたな。
われわれの年代では、結婚の理由の第一は、やりたいだけやれると言うことじゃッた。
それがなにやら、結婚をしない、結婚をしてもセックスをしない、少子化で国が滅びるとか騒いでおる。
廃棄物焼却で出るダイオキシンで、男の性機能に障害が出ると、一頃メディアが騒いでおったがあれは、どうなったんじゃろうか?
小生のような用済み男が心配してもせんないことじゃが、巷の風評に惑わされず、ひたすら仙人の心境を目指している元気者のお話をしよう。
3.
窓の両側には、ベージュ色の花柄カーテンが、左右の壁に沿って垂れ下がっている。
サイドテーブルのランプのシェードを通した淡いピンクの光が、わずかに化粧台の鏡に映えている。
エアコンのほの温かい空気が、絵津子の髪を撫で、良夫の鼻に艶めいた女の香りを漂わせる。
絵津子の胸のボタンに指を掛けると「あたし、自信がないわ」と絵津子が呟く。
「だって、ずいぶん長いことしてないし・・」
「僕だって、自信なんかないよ。男はとてもデリケートだからね。その時になって、急に駄目ということも良くあるんだよ。男はその気があっても、立たなくちゃそれこそ役に立たないからねえ」
「いいわよ、立たなければ、一緒に添い寝してくれるだけでもいいのよ」
「それを聞いて僕も安心したよ。駄目だったらご免ね」
絵津子の言葉に、ほっと胸を撫で下ろしたのはむしろ良夫だった。
妻との夫婦ごとは、途切れ気味だった。
定年退職をして仕事の疲れはなくなり、週末に限られていた営みを増やしたかったが、もともとセックスに消極的だった妻は、週に一回でも多すぎると愚痴った。
妻に嫌がられて、やらせてくださいとお願いするのは、男の沽券に関わる。
自然と、距離が遠のいた。
どうしようもないと、妻に背を向けてティッシュに放出して、その場をしのいだ。
そんな折に、絵津子と知り合った。
離婚をして、一人娘に孫がいるが、趣味のダンスを踊るうちに意気投合した。
絵津子と唇を合わせ、抱擁する時のペニスの昂まりにようやく自信を持ち始めた良夫であったが、さて本番になった時のことを考えると、いささか不安があった。こればかりは、その時になって見ないと分からないのだ。
絵津子が、先手を打って「自分には自信がない、良夫が駄目でもかまわない」と言い出してくれたお陰で、良夫はリラックスした。
(絵津子、お前はいい女だ。僕はそういうお前に惚れたんだ。もし駄目でも、いつも駄目ってわけじゃない。お前が相手なら、いいおマンコが出来そうだ。立つものさえ立ってくれれば、思い切りお前に好い思いをさせてやるぞ)
不安が消えると、良夫の股間が期待で熱くなった。