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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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H.-5

今年度、陽向は教育担当係に配属された。
教育担当係の仕事で1年生向けのオリエンテーションを任され、昨日は3時くらいまでパソコンをいじっていた。
新人向けのオリエンテーションの内容やその他諸々瀬戸から「やれ」と言われ、大嫌いなパワーポイントと夜勤明けからずっとにらめっこしていた。
つまり、仕事から明けてから全く寝ないで目を凝らしていたのだ。
睡眠優先で身体を保っているこの身としてはだいぶ辛い。
陽向が起きようとモゾモゾ動くと「ひな…起きるの?」と湊の声が聞こえてきた。
「起きるよ。もうお昼だよ」
「昼か…」
「湊はもーちょっと寝てなよ。疲れてるでしょ?」
「…ひな」
「なぁに」
「あと5分…」
腕を掴んで湊は陽向を引き寄せた。
「あと5分だけ」
そう言って陽向を抱き締めて頬を寄せる。
陽向は湊の背中に腕を回して微笑んだ。
「5分だけだよ」
「うん」
「仕事しないと」
「ん…」
「湊聞いてる?」
「聞こえない」
陽向はヒヒッと笑って湊を抱き締めた。
そういえば、3月はお互いに忙しくてこんな風に寝ることなんてなかったな。
湊の隣で寝れることがとてつもなく幸せだから、この時間を大切にしたいと思う。
「湊…」
「…ん?」
「今月はずっと忙しい?」
「わりかし」
「来月は?」
「…ちょっとマシ」
「来月どっか行きたい」
「どこ行きたいの?」
「プラネタリウム」
「プラネタリウム好きなの?」
「好きだよ。星空とか」
陽向は目を閉じて湊の頬に自分の頬を寄せた。
「この辺でもキレイな星空あるだろ?」
「プラネタリウムのがキレイに見えるよ」
「…あそ」
湊は陽向を抱き枕代りにして眠りに落ちた。

2年目になったこの4月、運悪く瀬戸と同じ係に配属されてしまった。
あれから何もないが、なんとなく気まずい。
3月の時も同じ係ではなかったのに、なんやかんやとイチャモンをつけられてイライラする日が多かった。
今年こそは…と期待した自分がバカだったかな…。
ただでさえ忙しいのに、こんな事やりたくない…。
陽向の担当は、病棟の業務の流れとナースコールの対応の仕方だ。
眠いよー…。
と、思いながらも今日も寝ぼけ眼をこすりながらパソコンを立ち上げる。
いつだかに湊が買ってきた甘い匂いのするコーヒーをメーカーにぶち込む。
ガシャガシャと豆を挽く音が、意外と好き。
目を閉じながらその音に耳を傾ける。
あれがあーで、これをこーして…。
気付いたら音楽となり脳内を駆け巡っていた。
コードは分からないし、だいぶふざけた感じだけど、休日の暖かい部屋の歌がフワフワと浮かんでくる。
忘れまいと携帯のボイスレコーダーに鼻歌を録音し、引き出しから出したメモ帳に「コーヒー」と下手くそな字で書いて、仕舞う。
気付いたら豆は粉末となっていた。
お湯を注いでコーヒーの匂いを楽しむ。
至福の瞬間だ。
テーブルの中央にパソコン、左側にコースターに乗せたコーヒーカップを用意し、欠伸をする。
作業はそう単純でない。

14時を過ぎた頃陽向は、もう無理だ、と思い瀬戸にメールした。
『完成しました』
瀬戸からはすぐに返事が返ってきた。
『1年生来るの明後日だから、今すぐ見せに来い』
え…。
『病棟ですか?』
『俺ん家』
陽向は硬直した。
瀬戸の家に行くのは嫌だ。
『明日、日勤なのでその時でもいいですか?』
『今日見せに来い』
陽向はその返事に落胆し、ノロノロと外出する準備を始めた。
寝室でクローゼットを漁っていると湊が「どこ行く?」と眠たそうな声で言ってきた。
まさか瀬戸の所とは言えない。
「あー…買い物」
「そか。…気を付けて」
「うん」
黒いジャケットを羽織り、寒がりの陽向は4月だというのにマフラーをぐるぐる巻にして「いってきまーす」と家を出た。


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