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忘れられない時間
【レイプ 官能小説】

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『痴漢ごっこ』の記憶-6

 日暮れ近くになるまで、ふたりはなんとなく抱き合ったままその場から動けずにいた。
 美山がぽつぽつと自身の抱えていた事情を語り出す。
 念願だった大手ブランドショップに就職したのはいいが、売れば売るほどまた新たなノルマが加算されていく。
 営業成績は常にトップだが、だんだんとその生活に嫌気がさしてきた。
 過剰なストレスがたまり、長年付き合っていた恋人に裏切られたことが原因で自暴自棄になっていた。
 誰でもいいから、女をめちゃくちゃにしてやりたいと思った。
 適当な相手をみつくろうために登録したサイトで、桃子をみつけた。
 他に身寄りがなく、見た目はおとなしそうだから何をしても騒ぎ立てたりはしないと踏んだ。
 でも、何をしても桃子は動じない。
 すべてが終わって憑きものが落ちたような感じで、桃子に申し訳なくなってきた。

「ごめんね、桃子ちゃん。痛かっただろう? あんなことして、本当にごめん」
「ううん。べつに殺してくれてもよかったんだから」
 こんなわたし。
 失うものもないかわりに、生きている意味もない。
 桃子は兄のことだけを省いて、自身のおかれた状況を美山に簡単に聞かせた。
 お互いに、相手の境遇については何も言わなかった。
 言うべき言葉がみつからなかったのかもしれない。
 ただ、一緒にほんの短い時間だけ泣いた。
 その日から彼は何事もなかったように仕事に戻り、ときどき桃子と会ってはセックスやドライブを愉しむようになった。
 それが、美山との出会いだ。


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