虐め抜かれる快楽-3
ふたりでは広すぎる豪華な室内。
シックな色合いで整えられてはいるが、照明や調度品のひとつひとつに高級感が漂っている。
緩いカーブを描いた壁の半分近くが透明のガラスになっており、そのむこうがわには眩いばかりの夜景が広がっていた。
色とりどりのきらきらした宝石が散りばめられているようで、そこだけは日常生活から切り離された異空間のようだ。
はじめは連れて来られるたびにワクワクしたものだったが、それももう慣れてしまった。
だからこんな無駄金を遣わなくていいと思うのに、坂崎はこういうところのほうが雰囲気が合って好きだと言う。
桃子はいつも通りひとりでシャワーを浴びた後、大きなソファーでブランデーを愉しむ坂崎の正面に立った。
グラスをローテーブルに置き、坂崎が立ちあがる。
「ああ、今日も綺麗だね」
手を伸ばし、洗ったばかりの髪を撫でる。
そして少し火照った頬から、首筋、胸元へと流れるように指先が移動していく。
平らな腹、くびれた腰。
桃子のどこかに異常が無いか点検するように。
こうして身体検査のような真似ごとをするところから、坂崎のプレイは始まる。
洋服を着たままの坂崎の前で、自分だけが裸なのが恥ずかしい。
少しずつ、ほんの少しずつ体が高揚していくのがわかる。
立った姿勢のまま、両脚を左右に広げられ太ももの内側まで覗きこまれた。
決して性急な動作ではなく、ひとつひとつが非常にゆっくりなことが余計に桃子の羞恥心を煽り立てる。
恥ずかしい、でももっと見せつけてやりたい。
この男の紳士然とした仮面をはやく剥ぎ取ってやりたい。
そんな欲望を駆り立てられる。
坂崎の手が、脚の付け根あたりでぴたりと止まった。
「なんだ? この痣は」
坂崎が目を細めながら、桃子の内ももに残された紫色の跡を指さす。
白い肌に散った花弁のようにも見える痣。
全部、ユウにつけられたものだった。
「酷いでしょう? 美山くんのことがあってから、キスマークに目覚めちゃったみたいで」
古い痣が消える前に、また新たな跡をつけられる。
マーキングごっこはやめてほしい、と何度も言っているのに治らない。
坂崎が苦笑する。
「なんとも子供っぽい彼氏だね。というか、そんなことを許している桃子にも少々問題があるように思うよ」
「許してるわけじゃないけど……」
本気で抵抗すると、ものすごく傷ついた顔をするのだ。
そんな顔は見たくないから、ついつい言う通りにしてしまう。
女に慣れた男たちとは何もかも勝手が違って、扱いにくいことこの上ない。
「そんなに君を必要としている男がいるのに、どうして桃子は今日ここに来たんだろうね」
両手の指を遣ってグッと陰部を押し広げながら、坂崎がひとりごとのように呟く。
じっとりとした視線が、黒々とした陰毛の奥にのぞく桃子の裂け目に注がれている。
形のない何かが、粘膜の縁に絡みついてくるようだった。
じくん、じくん、と下腹部が疼き始める。
見られているだけで、じわじわと潤っていくのがわかる。
「……会いたかったの、坂崎さんに」
「だから、どうして会いたかったのかと聞いているんだ。話がしたかっただけなら、電話で済むことだろう」
それは。
答えにくさに唇を噛む。
他の男たちの場合は、桃子から呼び出すようなことはほとんどない。
むこうから求められて会いに行くだけだ。
だから呼び出されることがなければ、そのままいつまでも放っておくので自然と関係も切れる。
だが、坂崎にだけはいつも桃子からも会いたいと連絡を入れていた。
一ヶ月、もしくは二ヶ月に一度程度のペースで。