虐め抜かれる快楽-2
「ああ、そう思うね。どうしようもない男たちと何人付き合ったところで、くたびれるだけだろう? ああ、ただし僕だけは別だよ?」
僕は君の保護者のようなものだから。
さらりと身勝手なことを言う紳士面の男に、笑いがこみあげてくる。
「そんなこと言い出したら、美山くんだって英輔くんだって、みんな同じこと言うに決まってるじゃない」
「いや、違うね。僕にとって君は特別だし、君にとっても僕だけは特別なはずだよ」
「特別……」
出会い系の遊びの中で、桃子が最初に会った男。
そして、同じ種類の秘密を唯一共有できる男。
出会った最初の夜に、桃子の隠していた傷を探り当てられた。
ふっ、と遠い記憶が引きずり出される。
草深い山の中。
池が。
折檻する声。
あの頃はまだ子供で。
口の中に押し込まれたもの。
擦りむいたひざの傷、破れてしまったお気に入りのワンピース。
苦しくて、辛くて。
だから。
「桃子?」
坂崎の気遣うような眼差し。
顔を上げ、まわりを見渡してホッとする。
ここはホテルのレストランで、目の前にいるのはあの男じゃない。
大丈夫。
落ち着いて。
自分の胸に手をあて、呼吸を整える。
「……ごめんなさい。なんでもないの」
「大丈夫かい? 何かワイン以外の飲み物を頼もうか」
「ううん、いらない。それより、もうあまり時間が無いから」
その先は、言わずともきちんと伝わる。
坂崎はスムーズに会計を済ませ、桃子をエスコートしながらホテルのスイートルームに向かった。