車の中の淫事-5
嫌だ。
こんなの、やっぱり。
「み、美山くん、やだ……もう、帰る、帰りたいの……」
「へえ、桃子ちゃんのそんな可愛い声初めて聞いた。なに、泣くほど帰りたいの?」
そう言いながら、赤く隆起した乳豆にきつく歯を立ててくる。
ぎりっ、ぎりっ、と噛まれるたび、痺れるような感覚が脊髄を駆け抜けていく。
頬から涙が流れ落ちる。
陰部に二本目の指が捻じ込まれた。
痛みは無い。
とろりとした甘い快感。
もっと。
いや、やめて。
相反するふたつの感情が入り乱れる。
ぐちゅっ、ぐちゅっ、と狭い肉路を突き上げられると、足の指先まで細かな痙攣が起きた。
「いやっ、いやあっ……!」
「ああ、いい顔だなあ。いますぐ車から引きずり出して、あいつの目の前で犯してやりたいよ」
桃子ちゃんを犬みたいに四つん這いにさせて。
後ろから思い切り突いてやりたい。
いつのまにか美山の呼吸も荒くなっている。
ありえない想像
寒気がした。
この男の場合は本気でやりかねない。
美山と出会った日の、あの暗い瞳を思い出す。
連れ込まれた山奥の廃道。
あのとき、桃子は人間の殺意というものを初めて間近で見た。
「だ、だめ」
「なんで? いつもは涎を垂らして欲しがるくせに」
ちょうだい、って。
美山くんのおっきいおちんちんちょうだい、ってさ。
「こ、今度、なんでもするから。き、今日だけ、お願い」
「何でも? 絶対だよ?」
「う、うん、だから」
「また連絡する。今度こそ、君の大事なユウくんを紹介してもらうからね」
美山が名残り惜しそうに離れ、シートの角度が元に戻される。
……べつに大事なんかじゃない。
そう言い返す気力もないまま、桃子は衣服の乱れを整えて車を降りた。