車の中の淫事-3
「あ、そこの信号過ぎたあたりで止めてくれる?」
「ん? いいけど、桃子ちゃんのアパートもうちょっと先だよね」
「だって、あの子アパートの前とかで待ってそうだもん」
ユウのことだから、目の前で美山の車から降りてくる桃子の姿を見たらまたグズグズとうるさいことをいうのに違いない。
ほんと、面倒くさい。
「ふうん、面倒ならさっさと切っちゃえばいいのに。そういう男を相手にするって珍しいよねえ」
「べつに珍しくない。いままで周りにいなかっただけ」
「あはは、よく言うよ。ちょっとでも面倒なこと言い始めた男はポイポイ捨てて来たくせに」
「ユウは……いま捨てたりしたらホントに死んじゃいそうだし、なんか放っておけないっていうか」
「放っておけない、ね。いいな、俺もそんなこと言って欲しいなあ」
冗談なのか本気なのかわからない口調で、美山が拗ねたような顔をする。
結局信号を過ぎても車は止まらず、アパートの入口から少し離れた歩道に乗り上げて停車した。
「もっと手前でいいって言ったのに……あ、あれ」
予想通り。
正面玄関の頼りない照明の下で、ふくれっ面をしたユウがスウェットのポケットに手を突っ込んで立っている。
片手には携帯電話。
きっと何度鳴らしても桃子が出ないせいで怒っているのだろう。
美山が助手席側に身を乗り出して、桃子の視線の先を追った。
「ひょっとしてアレがユウくん? へえ、いいじゃん! グレーのスウェット上下っていうのは許せないけど、すごい可愛い顔してる」
「やだやだ、その舌舐めずりしそうな顔やめて。美山くん三人でヤリたいとか言い出しそうで怖い」
「いやいや、僕は複数プレイはあんまり好きじゃないよ。でも」
……こういうのって、ちょっと興奮するかも。
目線をユウから外さず、美山は桃子の手首をがっちりとつかんだ。