笛の音 2.-31
「私も、まだ、直樹が忘れられない。……直樹が、好き」
体を密している直樹が息を呑んだのが頬に伝わってきた。「ウソはついてないよ? 大好き。七年前から、ずっと」
直樹の股間が物凄く硬い。自分に対しては不能ではない――。
「彼氏とは別れられなくても、……直樹が愛美の彼氏だって知っても、直樹が欲しいって思っちゃうの。……直樹、突然現れて、抱くだもん。直樹のせいだよ。……でも愛美の事、考えたら、泣くこともできなくて、すごく辛かったんだ」
声に出して好きだと伝えるだけで膝から崩れそうになるほどの愉悦に包まれて、直樹にしがみついていなければ立っていられなかった。こんなことを言えば、七年前の電話は嘘だったと言っているようなものだ。しかし最早直樹は問うてはこないだろう。だから涙が溢れてきた。もう嘘をつかなくていい。
下腹部に直樹の男茎が擦れる。スカートの中が淫りがわしくなっている。誰に、どこを穿たれた穢身でも、崇高な直樹の体がたまらなく欲しかった。
「おねがい……。もう、耐えられないんだ。……直樹は愛美のものだってわかってても、もうムリ。……だってさぁ」有紗は鼻を啜って、「……だって、もともと私の、ものだったのに」
直樹がもう一度キスをしてきた。
「直樹。……セフレにして。……おねがい」
昼間から川辺の公園で何度もキスをしているのを、地元の誰かが見ていても知ったことではない。直樹さえ手に入れれば、茨城にはもう何も用はない。「……帰ろ? 東京」
有紗が離れて二の腕にしがみつくと、直樹が歩み始めた。