ふたりの出会い-5
そっと額に口づけられる。
あの日とは別人のように手なれたキス。
こめかみから頬、そして首筋へ。
ぞくっ、と肌が泡立つ。
はやくもいやらしい声が出てしまいそうになるけれど、悔しいから歯を食いしばって我慢する。
「んもう! さっきしたばっかりなのに、またするの?」
「だめ? こうしていると、何回でも桃子が欲しくなる」
ゆっくりと肌を慈しむように唇が移動していく。
骨ばった大きな手が、胸のふくらみを優しく包み込む。
力を入れ過ぎることなく、手のひらで上手に桜色の乳首を転がしていく。
肌の裏側から柔らかな羽毛でくすぐられているようだった。
ビクン、と背筋が震える。
だめ、って言ってやりたい。
でも彼の手が脚の間に伸びてくるころには、どうしてだかいつもその気にさせられている。
「ユウは、他に彼女作らないの?」
熱を帯びていく吐息にまぎれさせて桃子が呟くと、ユウが顔をあげて首をかしげた。
意味がわからない、とでも言いたげに。
「僕には桃子がいるから、他に彼女なんていらないよ」
「ふうん。それで、ユウが平気ならいいけど」
「平気ってわけじゃないけど……いいよ、しょうがないと思ってる。桃子のこと、ひとりじめにできないのは最初からわかってるから」
「昨日はあの赤いバイクの子とヤッてきたの。その前はベンツのおじさん、明日はたぶんあの広告代理店の人。ねえ、そういうのほんとに平気?」
「……わかってる、でもわざわざ口に出さなくたっていいじゃないか。もう黙れって」
わかっているというわりには声に不機嫌さが混じり、手の動きが乱暴になる。
強引に脚を開かせて、まだじゅうぶんに潤いきっていないあそこに突き立ててこようとする。
まるで、そこさえ繋ぎ合わせていれば桃子がどこにも逃げないとでも思い込んでいるようだった。
ほら、やっぱり純情だ。
ユウと一緒にいると他の誰といるよりも安心できる気がするのに、何か悪いことをしているような気持ちにもさせられる。
ただ寂しさを埋めるためだけの、くだらない関係。
こんなものは、恋でも愛でもない。
早めに終わらせないといけないな、と思う。
お互いにのめりこまないうちに。
できるだけ、傷が浅くて済むうちに。
けれどもユウが必要としているのと同じように、桃子もまたユウを失うことが日に日に怖くなりつつあった。
長続きなどするはずがない関係だと、最初からわかっていたのに。