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浦和ミュージックホール
【その他 官能小説】

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インタビュー ウィズ 淑江-3

 「帰りの事は考えなかったんだね?」
 「はい、帰るつもりはなかったですから・・・本当は東京までたどり着きたかったんですけど」
 「彼のところへ?」
 「はい・・・電話したんですけど、留守電になってて・・・もう夜遅かったですから仕方なく公園で・・・」
 「そうか、ネットカフェとか入るお金もなかったんだもんね」
 「夜もふけてくると寒くて・・・心細くて・・・公園の隅で震えてたらいかにも不良っぽい男の人たちに声かけられて・・・」
 「危ないね」
 「はい、危なかったです・・・その時に通りがかって『何をしている!』って・・・」
 「誰?」
 「支配人でした」
 「ああ、なるほど」
 「迫力ありました」
 「まあ、ああいうところの支配人ともなるとチンピラ位は圧倒できないとね」
 「でも親身になって話を聞いてくれて・・・家に泊めてくれたんです」
 「紳士的だっただろう?」
 「はい、一人暮らしだと仰ったので・・・その・・・」
 「分るよ、一発やらせろ、くらい言われるかもって思ったんだろう?」
 「はい、でも公園で輪姦されるよりずっとマシだと思って・・・でも本当に紳士的でした」
 「それがこの劇場との繋がりだったんだ」
 「はい・・・でも翌日、彼と連絡が取れて・・・」
 「迎えに来てくれた?」
 「はい・・・そのまま同棲を」
 「彼とは?」
 「二年一緒に居ましたけど・・・彼の海外転勤が決まった時、付いてきてくれとも待っていてくれとも言われなかったんです」
 「その辺の機微はわからないけど・・・」
 「彼に他の女性がいたとは思わないんです、でも、私と結婚する気はない・・・それはなんとなく分ってましたからさほどのショックではなかったです」
 「それで支配人を訪ねた?」
 「はい」
 「でも、その辺は少し短絡的に思えるけど・・・大変だろうけど、一人暮らしして次の恋のチャンスを待とうって思わなかったの?彼が結婚してくれないなら全てを失ったみたいに感じたわけかな?」
 「寂しいとは思いましたけどそこまでは・・・何故と言われると自分でも良くわからないんです、ここのショーを見せていただいて踊り子さんたちともお話して、良いなぁ、こんな生き方もあるんだなぁって思って」
 「それだけで?」
 「結局私って凄くエッチなんだと思います、あの劇場で男の人が興奮してくれると嬉しいし、まな板だって思い切り感じちゃいますから・・・私のショー、いかがでした?」
 「うん、物凄く感じてることが伝わってくるから興奮するよ、でも・・・」
 「分ってるんです、芸がないことくらいは」
 「正直に言わせて貰うと、風営法が施行されたらどうにもならないんじゃ・・・」
 「それまでに芸を磨くとしても時間はあまり残ってませんね」
 「だったら余計に・・・」
 「大丈夫です、まだオドオドしちゃう癖は直りませんけど、随分強くなったと思います、二年前だったら彼と別れるなんてことになったら絶望したかもしれませんけど、冷静に聞けましたし・・・今はやりたい事をやってるんです、ストリップが出来なくなったらAV女優になるかもしれませんし、ソープ嬢になるかも知れません、もし私がやって来た事を全部承知の上でお嫁さんにしてくれる人が現れれば行くかも知れません・・・私、今、親からも姉からも、それから彼からも離れて自由になれたんです、自分の人生は自分で責任取れるつもりです、もし傷心の末に自殺、なんてことになったとしても自分で選ぶことですから・・・でも、多分そんなことにはならないと思います」
 確かに強いかもしれない・・・柳の枝は風にそよぐけれど強い風で折れたりはしない、そんな強さを感じる・・・。
 「あの・・・ケーキを食べたいですけど、注文してもいいですか?」
 「あ、ああ、それは気が付かなくてごめん」
 「お金は私が・・・」
 「良いって、随分長い間話を聞かせてもらったから、奢らせて」
 「そうですか?」
 生真面目さは小さい頃から変わらないようだが、にっこり笑った顔は柳のようにしなやかだった。
 生きたい様に生きる、と言うのは頭を押さえつけられていた反動からかもしれないが、今の淑江は幸せそうに見える・・・おそらく彼のことも既に心の中で清算が付いているのだろうし、ご両親やお姉さんへの恨みも抱えていないに違いない・・・。


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