恋愛のかたち-1
恋愛の形は人それぞれ。
どんな形であろうと二人が幸せならそれでいいと思う。
「詩乃(しの)、数学の教科書かして」
「ん、でもうちも午後使うから早めに返してなー」
「分かった、取りに来て。じゃぁ」
………どうなん、この自己中ぶり。かしてもらうくせに取りに来いなんて言うこの唯我独尊な男こそ、うちの彼氏『大倉 要(かなめ)』。ルックスは半端なくかっこよくて、一年のときは半端なくモテてた男。
いや、今も十分モテてるんやけど問題はこの半端なく自己中かつマイペースな性格。今ではたいがいの女は彼氏にしたくないって言う。中には「私はついていける」って言って頑張ってる子もおるみたいやけど。
そんな要と初めて喋ったんは一年の学年集会のとき。クラスが隣だったことと、出席番号が同じやったことから自動的に集会のときは隣になった…それが始まり…。
「あ、まずい」
「え?」
「このパスタくそまずい。はい、詩乃のと交換」
「はぁー?!あ、ちょっと…!」
また強引にうちが食べてたやつを横取りする要。ほんま最悪やろ?
やのに好きなうちはほんまアホ。恋路の闇ってやつやね。そんでまた帰りも走るのめんどいとか言って電車一本逃すし…。
でも優しいとこもあるねんで?うちが泣いて電話したら飛んで来てくれたりする。
「どうしたん?」
「んー何か声聞きたくなっただけ」
要はめんどくさがりやから電話なんて全然してこーへんのやけど、こんな風にたまにかけてきたりする。この気まぐれがめっちゃ嬉しいん。
でも、最近はちょっと不安になってきてる。
「詩乃、やっぱ一緒に帰れへん」
「え!何で?買い物付き合ってくれる言うたやん」
「クラスの奴らとカラオケ行くねん」
「大倉くーん!早く行こー」
要のクラスの女が遠くから呼び、振り返りそれに「おー」と答える。
「ほな、気ーつけて帰れよ」
それだけ言って要はさっさとクラスの人らの方へ歩いて行った。一人残されたうちは何かマヌケみたい。彼女やのに…。