恋愛のかたち-4
こんな状況になっても相変わらず要はメールさえ送ってこない。呆れた男。
ようやく着信が鳴ったのが記念日の前日。
「お前なぁ、何やねん。メール一つさえもなしかい!」
「何でうちが送らなあかんの」
「何でって…。てか、お前今どこにいる?何か周りざわついて…」
「外」
「はぁ?!こんな時間に何やってんねん!だいたい明日…」
要が何かを言いかけてる途中でうちは口をはさんだ。
「可愛いやろ?何でも言うこと聞いてくれる女は」
精一杯のイヤミを込めて言ってやった。
時間は11時前。それでも街はたくさんの人でにぎわっている。
その一言を言うと電話を切り、ただふらふらと街中を歩いて行った。自然と涙が溢れてくる。
何がそんな悲しいんやろか…。
その時、後ろから声がした。
「詩乃ちゃん?」
振り返ると、要の友達の多喜くんがいた。
近くの公園へ移動し、ただ泣くだけのうちを多喜くんは慰めてくれた。
「結局、うちは言うこと聞いてくれる都合のいい女ってだけやったんよ」
「そんなことないって、あいつはあいつなりに詩乃ちゃんを大事にしとるで」
「そんなん知らん。感じられへん!もう疲れた」
「……じゃぁ別れるん?」
「………。」
何でここでうんって言えへんのやろ。自分にうんざりした。
「あいつは他の人らと遊びに行ったりするけど、そのときはいつもひろちゃんに『詩乃一人やから一緒に帰ったってくれ』って頼んでるねんで」
うちは下を向いたまま黙りこんだ。
「不思議な奴やで。確かに自己中なんやけど、どっかに優しさがあって、あいつから離れようとは思わへんねん……詩乃ちゃんも分かってるくせに」
毎回ひろちゃんに頼んでたなんて、迷惑かけて…ほんま、要は周りの人を振り回す。なのに誰も離れようとしない。
多喜くんの言う通りや。
それに一番気付いてるんはうちや。
多喜くんはまた泣き始めるうちの頭を何も言わずになでてくれた。その途端、その手はいきなり離れた。
「何やってんねん」
要が多喜くんの手を引っ張り上げていた。
「わぁ、びっくり」
「俺の女に手ェだすな」
そう言って今度はうちの腕を掴んで強引に引っ張り歩きだした。そうや、この強引な言い方や行動が何気に好きなんや。後ろを振り返ると、多喜くんは笑いながら手を振っていた。