気まぐれ-1
〜気まぐれ〜2-1
眠気と戦いながら、早めの時間の電車に乗る。いつもと同じ車両の列に並び、いつも同じ席に座り、仕事に向かうのだ。
朝の通勤電車の1時間は、いつもマスクをつけ居眠りしている杏子。
…ピロン
眠気のなか、おもむろに携帯に目を落とす。
“おはようございます。”
(…本当に連絡きた。いや、連絡してもいいとは言ったけども、なんだ?このメールは…?)
“おはよう。朝早いんだね!ちゃんと仕事してきなよ〜。”
“僕こう見えて仕事出来る子ですから。”
“サボって遊んでる龍崎くんしか知らないよ?”
“ひでぇ〜(;д;)アレでもちゃんと仕事してましたよ。”
“それよりいつからそんな懐いてきた訳?”
“ここぞとばかりに、あの時の仕返しなんで気にしないでくださいよ^_^”
“仕返しされる覚えないんだけど?”
“うわ〜よく言いますね。全く相手にしてない!って感じだったじゃないですか?まー嫌がらせとでも思ってください^_^”
“なんだその言い草は…^_^”
そんな冗談混じりの会話。
(…変な奴。)
不思議に思いながら、満員電車を降り、出社する杏子。
「おはようございます。倉山さん、今日はこっちの担当お願いします。」
(…さて今日も頑張ろう!)
予約の確認、施術ルームのセッティング、備品の補充、予約受付の電話対応に追われる。
予約がびっしりと埋まる日は、昼食をとる暇さえなく、時間に追われる。
「いつもありがとうございます。次回のご予約はいかがなさいますか?
かしこまりました。
では○月○日○時にご予約承ります。またのご来店お待ちしております。
ありがとうございました。」
笑顔で深々と一礼して、最後の客を見送る。
やっと一息つけば、閉店時間。
「お疲れさまです。今日も大変でしたね〜。ではまた明日もよろしくお願いします。」
同僚と別れ電車に乗り込み、慣れた手つきでイヤホンを装着し、お気に入りの曲を聴きながら帰宅。
お風呂から上がると携帯のディスプレイに気づいた杏子。
龍崎からのメールである。
“やっと終わった。
これから帰れる〜(;д;)”
(…こんな時間まで仕事してるんだ。どうゆう風の吹き回しか、わからないけど…ま、いっか。)
変な違和感を感じながら返信をする。
“お疲れさま。こんな時間まで仕事って、何の仕事してるの?”
“知らなかったんですか?広告代理店ですよ〜。”
“あー確かPC得意だったもんね。”
“だから仕事出来る子なんだって。あの時のままじゃないんですよ〜。”
“自分でそれ言っちゃうんだ?”
“倉山さんて何処で仕事してるんですか?”
“新宿にあるエステだよ。”
“本当にエステティシャンなったんですね〜。新宿なら仕事でよく行きますよ。今度飲み行きましょう。”
“気が向いたらね〜^_^”
“そろそろ寝ちゃいますよね?
お休みなさい。”
“お休み〜”
そのまま眠りに落ちていた。