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浦和ミュージックホール
【その他 官能小説】

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プロローグ-1

久しぶりにその場所を訪れた。
 風俗で働く女性を題材にした雑文を書いている俺はどこへでも取材に行く。
 確かに新宿、渋谷、池袋といった大きな街には名の通った店もあり、新しい風俗の発信地でもある。
 競争は激しい、店の間の競争だけではなくそこで働く女性たちの間にも競争はある、それゆえ若く美しい女性も集うし、人気店も誕生し、新しい風俗も生まれる。
 しかし、少し都心を離れた、そう、ここ浦和のような街では少し事情が異なる。
 こういう街の風俗には少しくたびれた女性たちが付き物、確かに若くはなく、さほど美しくもないが、彼女たちが辿ってきた人生の重みと言うものがある。
 大きな街の風俗をステーキに例えるならば、こちらは肉じゃが、素材の豪華さやボリュームでは及ばないまでも、出汁が利いたほっとする味。
 俺はむしろそういう店に、女性に惹かれるのだ。

 久しぶりに「あの場所」を訪れてみた。
 30年近く前、俺が風俗に魅せられるきっかけになった劇場がそこにあった。
 そして風俗ライターとなって5年ほど経ち、最先端風俗を追い掛け回すことに少し疲れた俺が惹かれたのもその劇場、表面的な目新しさ、過激さを追い求めていた俺が風俗で働く女性の内面に目を向ける様になったきっかけもこの劇場だった。

 数年前に閉鎖されたことは知っている、最後の公演にも立ち会い、ネオンが消える瞬間も見守った。
 数年前にも既に老朽化した雑居ビルだった、周囲に立ち並んでいる新しいビルに比べて見劣りしていた事は確かだったが、「その場所」には懐かしい建物はもうなかった。
 木杭とワイヤーで囲まれた空き地に「建築計画のお知らせ」という看板。
 こうして更地になってみると思いの外狭い、ここに劇場があったのかと思うほどだ。
 記憶を辿ってみる。
 ここに階段があり、ここに入り口が・・・切符売りのおばさんの姿が浮かび上がる。
 ステージはこの辺か・・・花道がこう続いてその先には出べそと呼ばれる回転する丸いステージ・・・踊り子たちの華やかでエロチックな姿が浮かび上がる。
 そうすると楽屋はこの辺だったのか・・・あの楽屋での取材がなければライターなぞとっくに辞めていた・・・畳敷きの8畳ほどの楽屋に溢れかえっていた踊り子たち、華やかな衣装に身を包んで出番を待つ踊り子、裸でここに戻り、バスローブを羽織って一息つく踊り子・・・彼女達は今どうしているのだろうか・・・。
 


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