陥落-3
しかし三十分後――
藤崎君はうつむき、拳を握りしめながら、首を縦に振った。
顔は見えないが、おそらく泣いているのだろう、肩が小刻みに震えている。
首を縦に振らせた決定的な言葉は、
「私はすでに藤崎君のすべてを見ているんだ。君もヴァージンじゃないんだろうから、一晩くらいいいだろう?」
という言葉だった。
「……本当に画像は処分して下さるんですね?」
「約束するよ。君とのことは私と一晩を共にすることでチャラにする。君は自由だ」
「……本当に卑劣な人ですね」
「ああ。何と言ってくれてもいいよ」
最後の言葉に異論はなかった。
実際に私のしていることは卑劣だったし、藤崎君を抱けるのなら、何と言われてもよかった。
「今度の土曜日、ホテルを取っておくから。どこかで待ち合わせしよう」
「……わかりました」
「しっかりおめかししてくるんだぞ。最高の君を抱きたい」
「…………」
「それから」
私はさらに追い打ちをかけた。
打ちひしがれている彼女を見て、急に思いついたのだ。
「今、穿いているパンティをこの場で脱いで、私にくれないか」
「え……!?」
彼女が顔をあげた。
「土曜日までのお楽しみにしたいんだ。私がヘンタイなのはよく知っているだろう?」
嗜虐心に煽られて、私はどんどん大胆になっていった。
「さあ、今、穿いているパンティを」
藤崎君は目を泳がせた。
「でも、脱いでしまったら、会社で…」
「ノーパンで過ごすことになるな」
「勘弁して下さい。そんなこと、あたし…」
「いや、ダメだ。あんまり聞き分けのないことを言ってると、君の恥ずかしい画像を全社一斉メールで送ってしまうぞ」
「……!!」
藤崎君はしばらく逡巡した後、イスからしぶしぶと立ち上がり、スカートの中に手を入れた。
そして、震えながら腕を下ろしていくと、スカートの裾からピンク色の布地が見えてきた。
「ほう、ピンクかね」
ふくらはぎを下りていく魅惑の布地に私の目は釘付けになり、思わず唾を飲み込む。
会議室全体に密封されていた甘い芳香が立ちこめているように思える。
藤崎君はパンティを脱ぎ終えると、手に握りしめたまま渡すのをためらった。
「さあ、それを」
私は歩いていくと、彼女の手からピンクの布地を奪い取った。
脱ぎたての温かさが手のひらに伝わってくる。
下着は薄いピンクをベースに白のレースが施された可愛らしいものだ。
会社のアイドルの生パンティを手にしている感激に震えながら、次の行動に移った。
もちろん、やるのは、先日旅館でやった行為だ。
魅惑の布地を鼻の所に持っていき、思いきり息を吸い込む。
「あうぅっ……!」
脱ぎたての生パンティの香りは、旅館でのものとは比べものにならないほど、甘く濃厚だった。
一息吸っただけで意識が朦朧としてくる。もちろん、股間のモノはギンギンだ。
目の前のおぞましい光景に耐えられなかったのか、藤崎君はそのままイスにへたり込んだ。
「藤崎君、口でやってくれないかな?」
「え……っ?」
「こうなってしまった以上、オナニーをするしかないんだが、せっかく君がいるんだ。君にしてもらおう」
「……イヤです。話が違います。土曜日にセックスすれば、それで済む話じゃなかったんですか!」
「ふ、藤崎君、声が大きいよ」
藤崎君の顔は怒りにあふれ、必死だった。
どうやら調子に乗って、彼女を少し追いつめすぎたようだ。ここで開き直られては元も子もない。
私はあきらめることにした。それにフェラなど、土曜日の夜にいくらでもやらせることが出来るのだ。
お楽しみはとっておくに限る。
「じゃあ、藤崎君、土曜日に」
「……わかりました」
彼女はイスから立ち上がった。
お辞儀もせずに背を向けてドアの方にいく。
その後ろ姿を見ながら、あのスカートの下はノーパンなんだと思って興奮する。
手にしている脱ぎたて下着の香りが興奮をさらに加速させる。
土曜日の夜、あの藤崎由美を自由にできると考えただけで、イキそうだった。