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〈生贄の肉・二つ〉
【鬼畜 官能小説】

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〈生贄の肉・二つ〉-2

「私、高校を卒業したら、直ぐに《主》の元に参ります……」


目はキラキラと輝き、曇りなき瞳は真っ直ぐに修院長に向けられている。

数年前までは、取り立てて見栄えのしない純朴な少女であったのに、今では精神の純潔さからくる美しさ故か、誰もが振り返る美少女へと昇華していた。

今時の娘にしては珍しく眉も不自然に細くはなく、切れ長な目は長い睫毛によって凛とした雰囲気を醸す。
鼻筋は美しく通り、薄い唇は口角を緩やかに上げて、柔らかな曲線を描いている。


間違いなく、玲奈は学園の“アイドル”であった。

あった。とは、つまり過去の話である。

思春期の始まる中学生時代、多数の男子達から羨望の眼差しを浴び、叶うならば彼女としたいという願望を玲奈は受け続けた。
だが、それこそが世俗的な欲望であり、修道女として生きると決めている玲奈には、迷惑千万な〈世辞〉であった。

だから、玲奈が“其れ”に靡くような事は一度として無かったし、口付けは疎か、感情を携えた異性との同行など皆無である。

そんなだから、義務教育が終わったら、直ぐに修道院に入ると玲奈は両親に訴えた。
だが、せめて高校だけは卒業しなさいと諭され、やむ無く女子高に入学した。

仲の良い友達は居ても、恋愛感情を抱いて近付いてくる女子は居なかったし、玲奈の胸中が乱される事も無かった。
それは実に平穏な学生生活といえよう。



「修院長様、こちらにいらしたのですか?」


もう一人の修道女が、玲奈の前に現れた。
名前は橋下奈々未と言い、修道女見習いの22才である。

切れ長でありながらパッチリと開かれた瞳と、スッと通った鼻筋やシャープな顎のラインは玲奈にそっくりで、傍目から見れば姉妹にしか見えない程よく似ていた。
その紺色の修道着を纏う姿は、未来の玲奈そのものと呼んでも差し支えない。


「毎日のお祈り感心しますわ。ですが、お祈りも大切ですけど、あまり暗くなる前にお帰りなさいね」

「はい、また明日お祈りします……」


にっこりと微笑む奈々未の姿は、まだ見習いといえど聖母のような優しさに満ちており、自分も早くああ成りたいとの思いをいっそう強く抱きながら、玲奈は教会を後にした。

見上げた先に広がる赤と青と混じる夕暮れの空に、気が早い一番星が瞬いている。
その“ぽつねん”と光る輝きは、ひとり高い志を秘めたこの少女と同じように哀しく、それ故に美しかった。





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