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笛の音
【父娘相姦 官能小説】

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笛の音 1.-35

 同級生との飲み会楽しかった?、と問う洋子に、
「んー、女の子ばっかりだったから盛り上がっちゃった」
 と笑みを返す有紗を見ていた叔父は、そうかよかったな、と抑揚のない声で言って読んでいたビジネス誌に目を落とした。パパ明日早いんでしょ、寝たら?、と洋子が言う声を背中に聞いて階段を昇った。信也も洋子も居た食卓で、大学時代の友達から飲みの誘いのメッセージが届いた事実が大きい。疑いは全く感じられなかった。
 叔父が「抱かれたら分かる」などと大口を叩いていたくせに、帰宅した養女の変化を見抜けなかったことを密かに嗤った。そして今日は、今日だけは叔父が自分に手を出してこないことを切に願った。レンタルルームを出る前にシャワーを浴びる時間はなかった。身繕いをして外見は整えても、体の中にはまだ直樹の畢竟が残っているだろう。彼に服を脱がされるまでに漏らし続けた愛液が、ショーツにはしたないシミ痕を作っている筈だ。それを見咎められたら、叔父は暴虐に狂う。さっさとシャワーを浴びて隠滅しなければならない。
(でも、もったいないな)
 浴室へ向かう準備をしながら、一方で有紗は残念さも感じていた。彼に抱かれた証をできるだけ長く残しておきたい……。しかしそれは杞憂だった。シャワーを浴び、身に残る直樹の汗も唾液も、そして精液も洗い流しても、体を包み込んだ直樹の温もりは消えてはいかなかった。ベッドに入って目を閉じ、今日の幸せな邂逅と逢瀬を思うだけで彼の存在が生々しく思い出せた。
 翌日、折にふれ今日直樹は何時くらいに連絡をくれるだろうと考えつつ仕事をしていると、愛美からメールが届いた。
『お母さんの昔からの友達のお父さんが亡くなって、夫婦でお世話になってる人だから、二人でお通夜に行くんだって。ご飯は無いのでそれぞれ何とかするように、とのことです。私、今日は七時まで英会話なんだけど、帰りに待ち合わせて一緒に食べようよ』
 ――奢らせるつもりだな、と苦笑し、それもいいか、と思った。直樹からの連絡をやきもきして待っているよりも、爛漫とした愛美と話しながら夕飯をとっていたほうが時間が早く過ぎるだろう。何を食べさせなきゃいけないか分からないが、お金を下ろしておいたほうがいい。しかし、英会話教室のあるのは八重洲。愛美より有紗のほうが早く終わるだろうから、有紗が待つことになるだろう。東京駅近辺は安くはない店しか無いから勘弁してほしいな。そんな事を考えながら了解の旨の返信をした。
(……まあ仕方ないか。愛美、英会話にバイト代つぎこんでるし)
 妹は大学合格に慢心することなく、将来の目標に向かって自己研鑽に励んでいる。しかもなるべく養父母を頼らず、自分の稼ぎで賄おうとしている。愛美も歳を重ね、思っているよりもずっとしっかりしているのかもしれない。もうすぐ庇護はいらなくなるだろう。そうなったら、淫欲の豪波に耐えてまで、あの家に暮らしている意味はない。
 愛美が自立するまであと少し――。そうしたら自分は抜け出せる。その命綱は昨日目の前に垂らされた。
 東京駅に着いたら、小雨だった雨が本格的に降ってきていたから地下街へ入った。アベニューを歩きつつスマホの画面を見たが、メールもメッセージも着信はなかった。まだ早いか。ちょうど話しているところかもしれない。
 あまり早く出ると時間を持て余すことになるから、なるべくゆっくりと会社を出たので十九時まであと五分くらいだった。愛美から連絡が入ることになっている。といっても十九時すぐに学校を出ることができるわけではないから、もう少しだけ時間があるだろう。喫茶店に入るには時間もないし、却って中途半端になっちゃったな、と思いながらブラブラと通路を歩いて行った。途中、大手下着メーカーの販売店があり、胴体しかないマネキンが赤いランジェリーを身に纏っているのが見えた。店の中に歩を進めて近くで眺めてみる。店員が寄ってきて何か言ったが、有紗は頭の中で直樹がこれを着た自分に欲情してくれる表情を思い浮かべて幸せな空想に耽っていたから無反応だった。
 バッグの中で携帯が震える。愛美だった。
「お姉ちゃん、終わったよー。いまどこ?」
 有紗は通路に出て周囲を見回し、
「八重洲の地下街にいるんだけど……、ごめん、ここどのへんかわかんない」
 普段来ないからね、と思ったが、よく考えればここ一週間の間に三回来ていたことを思い出して一人で苦笑した。
「んっと、じゃぁ……、今、私、壁の地図みてるんだけどー……。真ん中辺りに案内所、ってあるみたい。そこが広くてわかりやすそう。19番って階段のマークある。そこで待ち合わせしよう」
 真ん中って言われても、と思ったが、自分も壁の地図を見ればいい。一旦電話を切って近くにフロアガイドを探した。帰宅や食事の時間帯で、しかも外は雨だから地下街は混んでいる。人の流れに従いながら途中でフロアマップを見つけた。『メイン・アベニュー』と書かれた先に案内所と十九番出口を見つけ、石敷を模した床にパンプスを鳴らしながら歩いて行った。柱に中央を区切られた通路は広かったが、そのせいで人の流れが一方向ではなく、ぶつかるのを避けるために却って歩きにくかった。


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