植物園にて-7
一瞬、頬に柔らかくて暖かいものが触れ、ジルは目を瞬く。
「また、ね」
驚いているジルの手からするりと抜けたリョウツゥは、軽やかに階段を上がって行った。
キスされた頬に手をやったジルはリョウツゥの後ろ姿を見送る。
「……とりあえず……パンツは白……」
童貞でもあるまいにほっぺにちゅーごときで動揺した自分を誤魔化す言葉を呟いたジルは、大きな荷物を抱え持ってその場を後にした。
その頃、植物園の一角では。
「なっ何だ?!いきなりっ」
ヴェルメが戸惑いの声をあげながら壁際に追い詰められていた。
「時間が無いので手短に」
追い詰めている犯人はキアノで、彼は上着を脱ぎ捨てながらヴェルメを壁に押し付ける。
「だからと言って、ここをどこだと……っ」
ヴェルメの抗議の言葉はキアノの唇によって遮られた。
「んっ んふぅ」
荒々しく繰り返される口付けにヴェルメは眉を寄せる。
「っはぁっ 暫く帰らないと言っていただろう?」
唇が離れた隙をついてヴェルメが言うと、キアノは困ったように笑った。
「すみません……急に発情してしまいまして」
それでか、とヴェルメは脱力する。
「発情ぐらい身近で済ませられるだろうに……」
忙しい中、苦労してわざわざ帰ってくる事は無い、とヴェルメが言うとキアノはきっぱりと首を横に振った。
「嫌です。僕は発情だろうが何だろうがヴェルメさん以外は抱きたくありません」
そして、ヴェルメの首筋に顔を埋めて身体を撫で回す。
「せめて場所を変えないか?」
「待てません」
「だが……っ?!」
言葉の途中でヴェルメは息を飲んだ。
その様子を見たキアノは嬉しそうに微笑んで、息を飲んだ原因である乳首への愛撫を強める。
「ぅ 待て……ないなら さっさとっ」
「いえいえ、発情だろうが何だろうがヴェルメさんが感じてくれなければ意味がありませんので」
柔らかい革布の上から乳首を強めに摘まんでくりくりと動かすと、ヴェルメの褐色の肌から赤い鱗がざわざわと生えたり消えたりする。
他の民で言うなら鳥肌が立つ、といったところか。
キアノ的にはヴェルメが感じている証拠、なのだそうだ。