植物園にて-3
「しかし、所持金は無いようだが……」
「それで、どこか働ける場所を探そうかと思って……」
「ふむ。斡旋所を探していたのだな?」
掲示板で探していたのはそれか、とヴェルメは1人納得する。
「斡旋所……」
成る程、仕事を探すなら役場ではなく斡旋所に行くのか、とリョウツゥは小さく頷いた。
「失礼だと言ったが荷物を調べた時にノートが出てきた」
里で書き綴った茸とか植物の記述の事かな?
と、リョウツゥは顔を上げてヴェルメを見る。
「中々、良い内容だった。私達は主に明るい場所の植物を扱っているから知らない事も多くて、正直驚いた」
「植物園の方にそう言っていただけると……嬉しい……です」
ヴェルメの賛辞にリョウツゥは赤くなって顔を伏せた。
「お世辞抜きで素晴らしい。リョウツゥだったな。働く場所を探しているなら植物園で働かないか?」
「ぇ?」
「うん。それが良い。そうしよう」
驚いているリョウツゥを無視してヴェルメは自分の考えに満足そうに頷く。
「ぁ、あの……」
「ん?嫌か?なら仕方ないが……」
「い、嫌じゃないです……で、でも……あの……急過ぎて……」
全然、頭がついていかない。
「そうだな。確かに急だった。すまない。なら、2〜3日考えてみてくれ。それまでここに住んでくれて良い。そうだ、植物園を案内しよう。うん。そうしよう」
また1人で決めて満足そうに頷くヴェルメに、リョウツゥはもう何も言わなかった。
とりあえず、雨露がしのげて食べるのにも苦労しないし、怪しげな事をさせられるワケではなさそうなので、植物園で働かせてもらうのも良いかもしれない……と、思ったからだった。
食事の後、約束通り近くにある植物園を案内されたのだが、思っていた以上に素晴らしい植物園だった。
行った事の無い地域の、見た事の無い植物達。
それがそれぞれの地域の環境に合わせて作られた施設で育てられていた。
青の地域の水中植物を育てる巨大水槽、銀の地域の広大な密林、厳しい赤の地域で育つ質素ながらも逞しい植物……そして、緑の地域の高山植物。
何もかもが素晴らしかった。