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ありがちな二人の、ありがちな日々
【女性向け 官能小説】

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そして、もう一度-2


季節はひと巡りして、夏を迎える頃。
遅い日暮れの中、湊は会社からの帰路に着き、車を走らせていた。

あれから一年。新太からの連絡は一度もない。けれど残してくれた約束を信じながら、湊はずっと一人日常を積み重ねてきた。

新太を思いだし、寂しさで遣りきれない夜を幾度過ごしただろうか。そんな時はソファーに座り、スケッチブックを眺めては、もうそこには居ない新太の姿を浮かべて文句を言ったりもした。

パキラの背が少し伸びた。新太がいつでも戻ってきてもいいように、もう二度と命を枯らさないようにと、世話を続けた結果だ。


フロントガラスに広がる、流れるような夕暮れの景色は、いつもと変わらぬものだった。
夕焼けの朱に薄藍が混ざり、町は夜の色に包まれて。前を走る車のテールランプや、対向車のフロントライトを見ると、一日の終わりを感じて少し切なくなりつつも、湊は今日の無事に小さく安堵もした。

大きな波も変化もない毎日だ。
時に退屈に憂いてみたり、ささやかな楽しさに一人小さく笑んでみたり。
最近はたまに一人で外食もするようになった。
会社では、少し笑って話せるようにもなった。

「だって…、ただ哀しんで、自分を狭めて閉塞した毎日を過ごしてたら、きっとキミは悲しい顔で、ごめんねって謝るでしょう…?」

一人の車内だ。けれども、湊の心の中にはいつでも新太がいる。そんな心の中の新太に向けて、湊はそっと語りかけた。

信号が赤になり、ブレーキパットをゆっくり踏み、車を停止させて、横目でコンビニを見た。

「…たまにはアイスでも食べようかな…」

ふと思い立ち、ウインカーを出して左折をして、そこに立ち寄る事にした。

空調の効いた車内から外に出ると、まだ日中の暑さが残る外気に包まれる。風はふけど涼しさがない。
暑さから少し気だるさを感じて、もう夏なんだなと改めて季節を実感した。

「いつまで待たせるのよ…」

空を見上げて小さく呟いた。すると、

「湊サン、ごめんね…」

背後からのまさかの声に湊は目を見開き振り向いた。そこには、

「湊サン、ただいま…」

バツが悪そうな…、けれども再会の嬉しさを滲ませた笑みを浮かべる新太が立っていた。

「…お帰り、迷子のキミ」
「…生きる道にはもう迷ってないよ。だけどね、湊サンの家が分からなくて迷子になってた…。ここで待ってれば、いつかは会えるかもって…」

申し訳なさげに小さく笑う新太に駆け寄り、

「バカっ! 住所や地形くらい覚えて出ていきなさいよ!」

胸に飛び込んで、泣きながら笑った。

「本当にね、バカだ。湊サン、ごめんね…」
「絵の具の匂いがする…」
「うん。あれからずっと描いてたから。湊サンは?」
「…毎日少しずつ。書きたい世界を紡いでるわ」
「そっかぁ…、読むの、楽しみだなぁ」
「誰が読ませるって言いました?」
「ちょ、酷いなぁ…」

新太は湊をしっかりと抱き締めて、くすくすと笑い出した。



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