34章-3
胸の中をじわじわと何かが侵食していく。
それは、優しくて、暖かくて、けれど少し切なくて――。
美冬は胸に掌を添えてそれを噛み締めると、鏡哉の小刻みに震える瞳を見つめた。
「私と……結婚してください」
心の底から湧き出たような美冬の笑顔を見た鏡哉の瞳が、徐々に見開かれる。
そして震える腕で自分の胸に美冬を抱き寄せた鏡哉は、まるで夢見心地のような声で答えた。
「ああ……もっと、幸せになろう――」
その返事に、美冬は自分の体の全てを鏡哉の胸に預けた。
ゆっくりと閉じた瞼から、熱い涙が一筋零れる。
暗くなった瞼の裏で、セーラー服を着た17歳の自分が幸せそうに微笑んでいた。