強い気持ち・強い愛-7
「嬉しかったよ」
「へ？」
「倫平は恥ずかしくて仕方ないかもしれないけど、あたしは嬉しかった。
……だって、倫平の本音がわかったから」
「……沙織」
沙織の顔をよく見れば、細めて笑う目尻のあたりに涙がたまっていて。
「倫平の本心を聞いて、あたし、いてもたってもいられなくなった。
だけど、倫平に気まずい思いさせちゃいけないって、ずっと我慢してて……」
――やがてその涙は膨らんでは彼女の華奢な手にまた跳ねた。
その手で少し乱暴にゴシゴシ瞳を擦りながら、彼女は唇を震わせ、
「……ねえ、倫平は、まだあたしを好きでいてくれてるって思っていいんだよね……？」
と、再び泣き出す。
「沙織……！」
その姿を見てると、俺まで目の奥が熱くなって、いろんな想いが込み上げてきた。
不安やコンプレックスもあったけど、もう俺は迷わない。
次の瞬間、俺は彼女を強く抱き締めていた。
「倫平、倫平……！」
俺の胸でむせび泣く彼女をしっかり抱き締める。
温かくて、柔らかくて、いい匂いがして。
ついこないだまでこうして触れていた沙織と変わらなくて、ただそれが嬉しくて、俺も涙をボロボロこぼしていた。
「ごめんな、沙織……！ いっぱい傷つけて、いっぱい泣かせて！」
「…………」
彼女の細い髪を梳きながら、振り絞るように言うと、沙織は黙って首を横に振る。
……沙織はいつだって俺を好きでいてくれた。
イケメンに好意を寄せられたって、ナンパをされていたって、その気持ちにブレはなかった。
そんな彼女の強い気持ちに気付かない俺は、不安とコンプレックスに押し潰されかけて、なんて弱かったんだろう。
好きの気持ちの強さは、絶対俺の方が強いって思っていたけど、ブレない一途な気持ちや傷つけられたにも関わらずこうして俺の元へ帰ってきてくれた沙織。
彼女を抱き締めていると、ホントに自然に、“もっと触れたい”という気持ちが込み上げてきた。