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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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ためらう理由-8

「あー。」

私の投げた球が見事ガーターし、肩の力を落とし、とぼとぼと戻る。その時佐伯君をチラッと見かける。するとあざ笑う様子もないが励ましてくれる感じもなく。

「ドンマイ…。」

代わりに一条君が横で励ます。

「ほらっ!愛しのあたる君が目の前に居るよ。」
「巴ちゃん。」
「私達は充分お膳立てをしたから…、後はアンタ次第だよ。」

彼女の話を遮るように佐伯君が次巴ちゃんの番だと言い、レーンへ近づき。

私は彼と話したい、彼ともっと近づきたい…、好きかどうかは別として。

ただその目的を達成するにしても、障害が二つある。一つは私が臆病な人間である事、折角二人が後押しをしてくれたのに、緊張して逃げ出したい気分。二つ目はそんな私を友達とし応援してくれている巴ちゃんの事だ。もし私の予想通り彼女が私と同じように佐伯君が好きだったら、愛おしい親友の目的を邪魔してる事になる。

それなのに彼女は私の恋に背中を押してくれる、どうしてだろう、目的と真逆な事をして
判ってないの?それともそれを理解した上で私に譲ってくれて。

「いやーー、ピン一本だけ残ってんじゃねーよ、ガーターより立ち悪い。」
「次で狙おう。」

ポツンと端に残ったピンを悔しそうに見つめる巴ちゃん、するとまだ終わってないのに、
佐伯君が立ち上がり、球を持つ彼女の元へ。

「ちょ、何よっ!」
「そんな体制じゃーガーターになるぞ、ここをこーやって。」

ピンを狙いやすく彼女の腕や腰を触る彼。そんな彼を疑視する一条君、佐伯君の行動は本人以外はとても良い行動とは思えない、まぁ悪い事してる訳じゃないんだけど。それにしても一条君顔つきがやけに鋭い、喫茶店で練った計画を邪魔した事だけに怒っているように思えないのは気のせい?

…兎にも角にもこれじゃー私は彼に近づけない、いや近づいてはいけない。

「やったな、倒せたじゃん。」
「ありがと……。」

何処か照れくさそうに短くお礼を言い、ボーリングルームを放れ。

「何処行くんだ?」
「ちょっとジュース買ってくる。」
「俺もトイレ。」

そう言って二人が消え。

「………。」

ポツンと私と一条君だけ残り。

彼と話したかった、あの日のお礼も言いたかった…。

でも!やっぱりダメだ、大好きな巴ちゃんを傷つけるような真似何て。

床に視線をがくっと落とし、彼への恋を断念する事に。

「どうしたの?彼にアタックするんじゃないの?」
「一条君…。」

二人に申し訳ない事を、私はもうどうにでもなれと彼に今の想いをぶつける。

「アタック何て、出来ないよ。」
「そりゃー恥ずかしいのは判るけど。」
「違うのっ!それもあるけど何より彼女に申し訳ないから。」
「えっ?巴の?」
「うん、だって……好き、何でしょ?巴ちゃんも…彼の事を。」
「……。」

想いをぶつけた私に、目を丸くし口を開ける彼、えっ…何?

「君、何か勘違いしてるよ。」
「へっ?」



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