胸騒ぎのカラオケルーム-1
カラオケ店の廊下、佐伯くんに指定された番号の部屋の前で早紀は深呼吸した。
早紀はここに来る前に駅のトイレに寄っていた。キモ豚の精液で汚れた顔を洗い、メイクを直し、喉がひりつくまでしつこくうがいしたのだ。胃に入ってしまった精液を吐こうと頑張ったが、それはできなかった。
「あのう、失礼します……」意を決し、ドアをノックする。
「おー。遅い遅い!」
荒っぽくドアが開いて、佐伯くんが顔を出した。
早紀は彼に肩を抱かれ、室内に招き入れられる。すっかりチンピラ風のチャラ男になり果てたとはいえ、かつて憧れていたひとに触れられ、早紀は不覚にもどきどきしてしまった。
「早くコート脱ぎなよ」
出っ歯に言われ、早紀は襟にふわふわのファーがついたピンクベージュのコートを脱いだ。
「バッグはこっちね」
スキンヘッドにバッグを奪われる。
早紀はカラオケボックスの狭い室内を見渡した。テーブルにはグラスがたくさん並んでいる。すでにかなり呑んだらしい。煙草の煙が充満していて、早紀はけほけほとむせながらソファに座った。
「桃井も呑みな」
佐伯くんにむりやり口にビールのグラスを押しつけられた。あわててくちびるを開いたが、ほとんどがこぼれてしまった。
「いけね、服濡らしちゃった。ごめんごめん」
「つめたいだろ、脱ぎなよ」
出っ歯が早紀の背に触れた。手早くワンピースのホックを外しファスナーを下ろす。佐伯くんとスキンヘッドの腕も伸びて、あっというまにワンピースをはぎ取られてしまった。
「ついでに下着も脱いじゃおっか」
「だめ!」
早紀は下着を手でガードして首を激しく振った。
「いいじゃん、さっきだって全裸になったんだから。いまさら恥ずかしがるなよ」
「これ、デッサンのときに撮った写真。待ち受けにしたんだ。いいだろ」
佐伯くんがスマートフォンの画面を見せつけてきた。そこには丸椅子のうえで脚をM字に開き、瞳を潤ませ頬を染めている全裸の早紀が映っていた。ボリュームのあるバストも、薄い毛で覆われた性器もばっちり見えている。
「いやぁっ!」
「この写真をフェイスブックにアップしようと思うんだけど、どうする? 高校時代のダチもいっぱい登録してるから、あっというまにみんなが見て大騒ぎになるぜ」
「そんなことしないで! いますぐ脱ぐから!」
早紀はあわてて手を背にまわし、ブラジャーのホックを外した。乳房が解放され、大きく弾む。
そのあいだに、スキンヘッドが早紀のショーツのウエストゴムに手をかけていた。ショーツが下ろされる。クロッチ部分と性器のあいだに、透明の糸がだらりと長く垂れた。
「うわっ! なんでこんなに濡れてんの?」
早紀も自分の濡れ具合に驚いた。確かに、キモ豚と君嶋果穂のセックスを見ているうちに、からだが熱くなっていたのは事実だ。ゴーヤペニスが無毛の肉襞に飲み込まれるようすを見て、子宮がきゅっとなった。だけど、まさかここまで濡れているなんて。
「やる気まんまんじゃん」
「4Pするつもりで来たんだろ。このエロ女」