「兄嫁」-6
夜中になって、雄二は足音を忍ばせながら二階に上がって行った。何を期待していたわけでもないが、真季の寝ている姿を見たいと思ったのだった。
階段を一歩一歩のぼるごとに、昨日、真季と浩一の夜の生活を覗いた記憶がまざまざと浮かんでくる。
真季が寝ている部屋の前に来ると、やはりドアが少し開いていた。どうやら建て付けが悪くなって、何かの拍子に開いてしまうのだろう。雄二は思わず部屋の中を覗き込んだ。電球はついていなかったが、煌々と照らす月の光で、部屋の様子はだいたい見て取れた。
目の前に、ベッドに寝ている真季の姿が見えた。掛け布団は掛けず、その上に横たわっている。
「あぁ…」
ふいに、真季の声が聞こえた。泣き声のような、甘えるような、男の官能をくすぐる声だった。
見ると、右手がパジャマの上から胸を撫でている。
「!」
息を飲んで見ていると、パジャマの裾から中に入った右手が、ゆっくりと左乳房を揉み始める。ベッドの上に投げ出された美しい脚がもじもじとよじり合わされていた。
「んんっ…、ん…」
押し殺してはいるが、真季は今や、はっきりとわかる喘ぎ声を漏らしている。眠っているのではなく、自ら身体を愛撫しているのは明らかだった。
(ね、義姉さん…、オナニーしてるんだ…)
真季は横になったまま、手と足を使ってパジャマのズボンを脱いだ。軽く開いた足の間に白い下着の底が覗いている。一方の手がそこに伸びて、パンティの上から陰部を撫で始めた。
軽く折り曲げて、しっかりと揃えていた両脚がついに崩れた。右足はまっすぐ伸ばしたまま、左足がおずおずと90度上に持ち上がり、折り曲げた足の膝小僧が天井を向いた。雄二の位置から、さっきよりはっきりと下着が見えた。
(パンティ…、濡れてるのかな…)
雄二はそう思って目を凝らすが、月明かりぐらいでは、それを確認するのは無理だった。
「ん…、んっ…、んんっ…」
真季の自慰は激しさを増していく。胸を愛撫していた手がパジャマから出て、シーツをぎゅっと掴んでいる。足の指が閉じたり開いたりしているのが目に入った。
「あっ…、いっ…、いやんっ…」
とうとう、真季はパジャマの上も脱いでしまい、パンティ一枚になっている。冴え冴えとした月の光を浴びて輝く肌が見える。
その手が乳首に触れた。ぴくんと身体が反応し、伸ばした足が一瞬、内股に少し縮まる。
「あ…、いやっ…」
そして真季はついにパンティの中に右手を差し込んでいく。
敏感な部分に触れたらしく、頭を後ろにぴくっと反らせ、投げ出していた足の膝が持ち上がった。
真季は身体をよじり、パンティを足から抜き取った。手の動きが制限されるのを嫌ったのだった。
「あンっ…、あンっ…、はっ、はっ…、」
全裸になった真季は、大きく足を広げた「人」の字型の姿勢で仰向けになっていた。左手は右の乳房を握りしめ、右手を激しく股間に突き立てている。
(凄い…、感じてるんだ…)
雄二の目は真季に釘付けになった。普段、清楚な分だけ、快楽に悶え狂うその姿はたまらなく淫靡であった。
「んん…、あっ、だめ…んん…」
真季が甘えるような喘ぎ声を漏らした。ドアの隙間から見つめる雄二は、強烈な興奮に、夢中で自分の物を擦りたてている。
「いやっ…、やンっ…、あぁん…、あっ…、あっ…」
美和の姿勢はさらに変化していく。一度は伸びきった両脚が少し縮まり、その足を支点にして腰が少しずつ持ち上がり始めた。
「あっ…、あぁっ…、あっ…、あっ…」
真季は無茶苦茶に指を動かした。指の動きに合わせて、くいっくいっと腰が持ち上がる。
(義姉さん、いきそうなんだ…)
「あっ…、いっ…、いっ…、あっ…、あぁっ!」
真季の体が、ぶるっぶるっと断続的に震えだした。
「やっ…、やンっ…、あっ…、んっ…、くぅ…」
真季は腰をがくがくと突き上げ、頭を大きく後ろに反らした。
「んっ…、んっ…んんんっ!」
そして、糸が切れたように、がくんとシーツの上に身体を落とした。荒い呼吸の中で、なお、しばらくぴくぴくと身体が痙攣している。