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「兄嫁」
【若奥さん 官能小説】

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「兄嫁」-2

「おはよう、雄二君、もう朝よ。」
 翌朝、雄二を起こしたのは、いつもの母のガミガミした声ではなく、甘く優しい女性の声だ。雄二は寝ぼけた頭で、跳び起きた。
 部屋の入り口にエプロン姿の真季が立っていた。新婚ほやほやの若妻らしいその姿に、雄二はまたもやみとれてしまう。昨夜から、何度バカみたいな顔で真季を見つめたことだろう。
「早く食事をして、出掛けないと遅れちゃうよ。」
 そう言って微笑む真季。雄二は、天にも昇るような気持ちにだった。
 顔を洗い、着替えを済せてダイニングキッチンに行くと、カリカリに焼いたベーコンと卵がテーブルに並べてあり、真季がトーストとミルクを運んできてくれた。
「兄さんは?」
「もう出掛けたわよ。お寝坊さん。」
 そう言って笑い、真季は肩まで伸ばした髪を自然なしぐさでかきあげる。わずかに茶色がかったその髪は、まるで何かをコーティングしてあるように,見事な光沢を放っていた。
「義姉さん、料理うまいね。」
「あら、ベーコンと目玉焼きを焼いただけよ。」
「でも、焼き加減がいいよ…、うん…」
「本当かしら?」
 真季はいたずらっぽく笑って、雄二の目を見る。
「でも、褒められるとうれしいわね。じゃあ、晩ごはんには、シチューを作っておくわ。私、シチューには少し自信があるのよ。」
 そう言ってほほ笑む真季。幸福な食事の間、雄二は何度も、真季との新婚生活を始めたかのような錯覚に陥った。

 その日、授業が終わると、雄二は悪友たちの誘いを一蹴して、一目散に家に帰った。
「ただいま!」
 元気良く家に飛び込むと、真季の楽しそうな笑い声が聞こえた。それに答えて、男の声がする。浩一が帰っているのだ。
「おかえりなさい。」
「おう、雄二、早かったじゃないか。」
 雄二に声をかける真季と浩一は、向かい合って座っている。
テーブルの上には暖かな料理とワイン。絵に描いたようなお似合いのカップルだ。
「兄さんこそ…、早いんだね…」
 雄二の声は、自分でもびっくりするほど沈んでいる。
「ああ、今日は外回りの仕事の後、直帰だったんだが、仕事がスムーズに言ったんでね…。」
「兄さんは、優秀だからな…」
 雄二は、「優秀」と言った言葉が刺を含んだ響きになるのを、自分で感じていた。浩一も一瞬、表情を硬くする。
「じゃあ、僕は勉強するから…」
 そう言って、何か言おうとする浩一を遮ると、雄二はくるりと背を向ける。
「雄二君、ごはんは?」
 心配そうな真季の声を背中で聞きながら、雄二はダイニングキッチンを飛び出した。

「やっぱり、腹が減ったなぁ…、ひょっとしたら、シチュー残ってないかなぁ…」
 深夜になって、雄二はそうつぶやきながら部屋から出て来た。
 勉強しようと思っても集中できず、感情の波が収まってくると、今度は空腹を意識して眠れなくなったのだ。
 一階の奥にある自分の部屋を出て、キッチンのあたりまで来ると、二階に上がる階段がある。
 午前1時過ぎの静まり返った空気の中に、微かな物音を聞いたような気がした雄二は、何げなく、音のする方をたどっていく。どうやら音は二階から聞こえてくるようだ。音に引き寄せられるように階段を上がると、女の泣き声のようなものが聞こえて来きた。
「…うん、何だろう…?」
 なんとなく放っておけない気持ちになった雄二は、声のする方へ歩いて行った。
 そこは兄たちの部屋だった。
 漏れて来る声は、もはや、はっきりそれとわかる。真季のよがり声だったのだ。
 見ると、ドアに少しだけすきまがあいている。真っ暗にせず、小さな電球だけはつけているようで、部屋から電球色の光が漏れていた。
(ちょ、ちょっとだけ…)
 夫婦の秘め事をのぞき見する後ろめたさより、好奇心の方がわずかに上回った。雄二は、物音を立てないよう細心の注意を払ってドアに近付くと、その隙間を覗き込んだ。


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