はじめてのヌードモデル-4
「あれ、さっきよりも乳首が立ってないか」
唐突に、正面にいる男が言った。
「ほんとうだ、乳首がビンビンだ。やっぱりヌードモデルをやるだけあって、見られて昂奮するタイプなんだろう」
キモ豚もそう同意して、早紀の胸と顔を交互に見てにやりと笑う。そのおぞましいほど醜い笑顔に、早紀は寒気がしてぶるっと震えた。
早紀は自分の胸におそるおそる視線を落として、息をのんだ。薄紅色の乳首はいつのまにかかたく尖っている。
――あたしの乳首、なんで立ってるの? こんなに膨らんじゃってるの、はじめて見た。すごくエッチな感じで恥ずかしい……。
しかも乳首はとても敏感になっていた。わずかな空気の流れが乳首を刺激する。早紀はくちびるを噛んでむず痒さに耐えた。
京佳先生は生徒たちの絵を覗き込み、アドバイスをしていく。
「菅沼さん、乳房の描写がとてもいいです。重量感が伝わってくるわ。だけどパーツだけじゃなくて全体のバランスも見て描いてくださいね」
「いやあ、目の前にこんなぷるぷるのおっぱいがあるのに、全体なんて見られませんよ。四つん這いだととくにおっぱいの迫力がすごいや」
「河野さんのデッサンはちょっと平面的すぎるのよね。肉体の立体感をちゃんと表現できるように頑張ってみて」
「立体感かあ。触って実感すれば描けるようになるかも」
永遠に続くかと思われた恥辱の時間は、京佳先生によって終わりを告げられた。
「はい、そろそろ終了にしましょう。桃井さん、お疲れさま。服を着ていいわよ」
早紀は、すぐさま四つん這いから立ち上がり、胸を手で隠しながらブラジャーを拾った。
「ええっ、もう? モデルさんが魅力的だと時間が過ぎるのが早いなあ」
「見るのに夢中でぜんぜんデッサンが進まなかったよ」
たくさんの男の眼に凝視されながら服を着るのは、脱ぐときほどではないけれど恥ずかしかった。早紀はブラジャーのストラップに腕を通し、ホックを留めようとする。そのとき、ぱんぱんに張りつめた乳首にブラジャーがこすれた。電流のような衝撃が早紀の乳房の先端で起こり、そして全身へと広がった。臍のしたが甘く震える。ショーツのなかで、どぷっとなまあたたかい液体がこぼれるのを感じた。
早紀は内ももに力を入れて、くずおれそうになるからだを支える。
キモ豚と眼が合った。キモ豚は、すべてお見通しだとでも言いたげに、にやりと顔を歪ませて頷いた。
――おっぱいが服にこすれて感じちゃったことも、あそこがぐちょぐちょに熱くなってることも、全部キモ豚にばれてるんだ……。
早紀は目の前が絶望で真っ暗になった。