女として、母として-3
さっきの欲情にまみれたキスとは違う、挨拶みたいなキスだったけれど、愛は感じた。
コツンとおでこをくっつけた私達は、どちらからともなくクスクス笑い出す。
「……瑠璃、今頃何してるかな」
私がそう言うと、彼は「そうだ」と、思い出したように、サイドテーブルに置いていたスマホを手に取り、私に画面を見せてくれた。
「さっき、天慈からメールが来て、『夕飯は二人でオムライスを作るので、キッチン貸してね!』だってよ」
そこには、付け合わせのサラダを作っているのか、瑠璃がレタスをちぎっている画像が表示されていた。
天慈くんがめいっぱいの愛情を注いでくれているのがよくわかる、瑠璃の満面の笑顔。
それを見たらこちらまで顔が綻んでくる。
「お前が倒れて寝てる時に、天慈に連絡しといたんだ。様子を見た上で、家に帰るかもしれないってな。そん時に、瑠璃ともチラッと話したんだけど……」
含み笑いをしている輝くんが怪しくて、首を傾げていると、
「『瑠璃はママとパパがいなくても頑張れるから、デート楽しんといで』だってよ、すっかりお姉ちゃんだな」
と、嬉しそうに笑っていた。
「そっか……」
甘えん坊の瑠璃も、知らないうちに成長しているんだね。
「もう少ししたら、瑠璃に電話してみようか」
「そうだね」
コツンと輝くんの胸に頭をもたれさせていると、彼の手が優しく背中を撫でてくれた。
「里枝、きっと瑠璃はいいお姉ちゃんになれると思うよ」
うん、知ってる。いつも兄弟のいるお友達を羨ましがっていたもんね。
おませで、私の真似ばかりしたがる瑠璃は、多分世話焼きタイプになるんだろうな。
勝手ににやけてくる顔を、不思議そうに眺めている輝くんに、
「……じゃあ、これからは子作り頑張っちゃう?」
と、イタズラッぽく言うと、彼もフッと眉を下げるように笑った。
トクン、トクンと、二人の心臓の音が重なる。
そして次の瞬間、私は再び最愛の夫に身体を押し倒されていた。
完