終わりよければすべてよし-8
首筋に降りてきた唇は、吸い付く音とともに、さらに私の身体のあちこちに赤い痕をつけていく。
「やっ、パパ! 待って!」
慌てて身を捩って逃げようとするけれど、やっぱり男である輝くんからは逃れられなくて、うつ伏せになった身体に覆い被さられる。
そのゴツい指は、私の髪をかきあげ、耳を露にした。
「里枝……」
そして、耳元で囁かれる低い声。
輝くんの声はこんなにセクシーだったの?
耳にかかる吐息に、思わず身体が小さく跳ねた。
「今は『パパ』は止めて」
そう言って、私の肩甲骨辺りにキスをまた一つ。
「あっ……」
「里枝はいつも俺や瑠璃のためにいいお母さんでいてくれるけど、今日はデートなんだろ?」
「う……ん」
「だったらさ二人きりの時くらいは、家族モードは止めな?」
不思議だ。家族モードから脱却するため奮闘してたくせに、抜けきれていなかったのは結局私の方で。
一方髪を撫でる節くれだった彼の指や、背中越しに伝わる肌の温もりは、すでに恋人同士だった頃のイチャイチャモードになっていた。
……だったら私も気持ちを切り替えよう。
「パ……て、輝くん……」
心の中で呼ぶのは平気なのに、昔の呼び名を実際口にするのは結構勇気がいる。
でも、吃りつつも名前を呼んだら彼がクスッと耳元で笑った。
「よくできました。じゃあ里枝は今だけは俺のことだけ考えてて」
輝くんは私の身体をゆっくり仰向けにさせると、ちょっぴり意地悪そうな笑みを浮かべて胸の辺りに視線を移す。
そして、鎖骨の辺りにキスを落としてから、ゆっくり双丘の頂を目掛けて唇を移動していく。
「うっ……く」
くすぐったさと甘い痺れがジワジワ身体中を駆け巡る。
皮膚を吸う音。肌を掠める彼の硬い髪。優しく触れてくる大きな手。
ああ、今、私は輝くんに抱かれているんだ――。
そう思うと脚の間がジュンと潤むのがわかった。