終わりよければすべてよし-7
でも、今日の輝くんは、お父さんモードじゃなかった。
力ずくで私の腕を掴んで引き剥がすから、裸の胸が露になる。
「やっ!」
思わず小さな悲鳴を上げてしまった。
「里枝」
「いや、パパとこういう雰囲気になるのなんていつ以来なんだろうねー。やり方忘れちゃった」
ああ、ダメだ。どうしても気恥ずかしさだけが先走って、普段の色気なしモードになってしまう。
長いことセックスレスだと、パートナーを性対象に見ることに罪悪感を感じるのかな。
あれだけ待ち望んだ展開なのに、誤魔化してばかりの自分に腹が立つ。
だけど、そんな私に熱を与えてくれたのはやはり輝くんだった。
今度は強引に私を抱き寄せ、奪うみたいな少し乱暴なキス。
片手でしっかり私の身体を抱き締め、もう片方の手で私の胸を包みながらの彼は、昔にいっぱい求め合った時と同じだった。
「いや、ハハハ……。胸がまた小さくなったから揉みごたえないよね」
子供を産んだ身体は、あのAV女優達みたいに綺麗な身体をしていない。
可愛い女の子の裸をたくさん見ている輝くんに、こんな貧相な身体を晒すのはやっぱりビビるから、また笑って誤魔化す。
でも、輝くんは笑うことなく黙って私を見ていた。
「里枝、こんな時くらいはいつもの明るい里枝じゃなくていいよ」
「パパ……」
「お前、恥ずかしいんだろ? 照れ隠しでそうやっておどける癖は相変わらずだな」
「う……」
「ま、恥ずかしがってる方が燃えるけど」
真面目な顔でこちらを見てると思ったら、急に口角をニッと上げた彼は、いきなり私に覆い被さってきた。
「きゃあっ!」
そしてベッドに倒れ込んだ私に降り注ぐ、キスの雨。
おでこだったり、ほっぺただったり、唇だったり、はたまた弱点の首筋だったり。
くすぐったさで身体中の毛穴がキュッと引き締まったような気がした。