終わりよければすべてよし-6
「……パパ」
考え事をしていたのか、やや俯き加減にベッドに座っていた輝くんは、私の呼び掛けに顔を上げるとゆっくり立ち上がった。
立ち上がると身長差で私が見上げる形になる。
そうやってしばらく見つめ合った後に、彼はゆっくり顔を近付けてきて、私はそっと目を閉じた。
一つ、また一つ。
優しいキスが注がれる度に身体の芯が疼く。
軽く唇が吸われる感触が心地よくて、自然に腕が彼の首の辺りにまわされる。
爪先立ちになるこの身長差が好きだ。
女にしては背の高い私は、小柄な女の人に憧れがあった。
小さい女は守りたくなるような感じがして、自分もそんな扱いされてみたいと思っていたけど、今まで付き合った男は悲しいかな、自分とほぼ変わらない身長だったり、自分より高くてもわずか2、3センチというもの。
だから、180センチの輝くんと抱き合うと、顔の辺りに彼の胸が当たるこの感覚がすごく好きなのだ。
やがてキスは少し大胆になる。
彼の舌が口の中に入ってくると、身体にまわした手に力がキュッとこもった。
「……っん」
僅かに漏れる吐息に、彼の手が動き出す。
今まで頬を撫でていた大きな手が、私の身体を伝って巻いていたバスタオルの結び目に辿り着く。
胸の上での結び目に触れると、あっという間にそれを解き、バサッと白いバスタオルが床に落ちる音が響いた。
身体がエアコンの効いた外気に触れ、鳥肌が立つ。
いや、鳥肌が立ったのはそのせいだけじゃない。
きっと、彼の視線が私の裸をじっと見ているせいでもあったから――。
「里枝……」
「な、なんか恥ずかしいね」
照れ隠しに笑って誤魔化すけれど、輝くんは黙っている。
ああ、こういう時ってどんな顔をすればよかったんだろう。
瑠璃をお風呂から上げて着替えさせる時とか、裸で追っかけ回すことがあるから、輝くんの前で裸になるなんて、日常茶飯事なのに。
こういう雰囲気だとすごく恥ずかしくて、そっと腕で自分の胸を隠してしまう。