11章-1
『私から、逃げられると思うな――』
そう言った鏡哉に、美冬は言いようのない怒りを覚えた。
「………っ!!」
(私から先に逃げ出したのは、貴方でしょう――?)
二人が微動だにしないので、広い部屋の中には沈黙が下りる。
それを破ったのは、美冬のほうだった。
ベッドから降り乱れていた制服を直すと、鏡哉の立つ扉へと歩いていく。
「帰ります」
「帰さない」
立て板に水の返事に、美冬は声を荒げる。
「高柳さんを呼んでくれる筈ではなかったのですか?」
「高柳、高柳、高柳――! あいつと出来ているのか!」
急に大声を出した鏡哉に美冬は目を丸くする。
「な! 出来てなんて――」
そう反論する美冬の口を鏡哉の唇が塞ぐ。
「ぅうっ!!」
とっさに両手を鏡哉の胸について逃れようとするが、頭の後ろと腰をがっちりと抱きしめられ、身動きが取れない。
(いやぁっ!)
鏡哉は噛みつくように美冬の薄い唇にむしゃぶりついてくる。
強引に舌で唇を割り開かせると、口内を縦横無尽に蹂躙した。
あまりの激しさに、鼻からの息だけでは酸素が足りなくなり、口からも息をしようとするのだが、その空気さえも奪われるように口づけされ、美冬は意識が朦朧としだした。
そして舌を吸い上げられる度に感じる言いようのない刺激も、彼女の思考を支配しだす。
(だ、ダメ、流されちゃ……)
そう思うのだが、頭の芯はぼうとして気が付くと鏡哉に体を凭れさせていた。
鏡哉に横抱きされ、ベッドの上に優しく下される。
キスで酸欠状態になっていた美冬は、いつの間にか自分のスカーフで手首を拘束されていることに気付かなった。
ぼうと上に重なった鏡哉を見上げると、ちゅっと昔のようにリップ音を立て、唇に吸い付かれた。
「鏡哉さ…ん……?」
しかしその表情は苦しそうで、美冬は思わず名前を呼んでしまう。
「そうやって、誑(たぶら)かしたのか……?」
(え……?)
「そうやって、高柳にも足を開いたのか?」
「ち、ちが――!」
かあと美冬の頬が赤く染まる。
「何が違う! どうせそんな濡れた瞳であいつに縋り付いたんだろう?」
鏡哉はそう言うと、痛いほど強くセーラー服の上から両胸を揉みしだく。
「やあっ! 鏡哉さん、違う! あんっ」
乳首を強く摘ままれ、美冬が鳴く。
「あいつは喜んでただろう? 制服フェチだからな、美冬のセーラー服姿だったらすぐ落ちただろう?」
そんなこと知らないと言い返そうとしたが、鏡哉が胸を愛撫しながら耳の中に舌を差し込んできたのでそのくすぐったさに、身を捩ることしかできない。
「や、やあぁっ! あぁ……」
ぴちゃぴちゃと耳の中を舌で掻き回される音が、美冬の鼓膜を犯す。
そんなところが気持ちいいはずがないと思うのに、中を舐められるとまるで美冬の中心をなめられているのかと思うほどの刺激が与えられた。
美冬の中心が熱く潤んでくる。
それが自分でも分かって、美冬は膝を擦り合した。
それに気付いたのか、両胸の乳首を弄っていた鏡哉の掌が制服の上を滑り、スカートの中に潜り込む。
「やっ! 駄目っ!!」
美冬は腰をよじって必死に抵抗したが、足に体重をかけられ逃げることが出来ない。
太ももをさわさわと撫でられるだけで、身震いがする。
ぴくぴくと反応する美冬をいたぶる様に、鏡哉は太ももの内側やおしりを優しくさするだけでその中心には触れようとはしない。
「美冬、君がどれだけ濡れているのか、見てもいいか?」
耳を蹂躙しながら鏡哉はそう呟く。
「やめて!」
聞かれたからそう返したのに、鏡哉はその答えに反して上半身を起こすと美冬の下半身へと体をずらし、ひざ上の襞スカートを捲りあげる。
上半身が自由になった美冬は体を起こそうとするが、鏡哉に簡単に押し返されてベッドの中に沈んだ。
「ああ、もうびしょびしょだ。胸しか触っていないのにどれだけ敏感なんだ」
そう言葉では蔑みながらも、その手はショーツの上から人差し指で秘所に指を埋める。
「あぁ……ダメ、んっ」
嫌なのに止めてほしいのに、美冬の喉からは甘い吐息が漏れる。
「下着が濡れて中が透けてしまっている。なあ、高柳はどこまで触ったんだ?」
「あ……触ってない、どこも、触ってません!」
美冬はそう答えるのに、鏡哉の耳にはまるで届いていないかのように、ショーツの中に指が侵入してくる。
くちゃ。
片方の手でよけられたショーツの横からもう一方の指の腹で、濡れたそこを撫でられる。
その度に美冬の体はびくびくと痙攣する。