も-4
「お互いに無理をしない範囲で行きましょう」
そう答える私に、笑いをこらえたように下を向く。
「ビジネスライクだな」
それって・・・
褒めてます?
「じゃぁ、関係成立。乾杯」
石島さんは今さっき注文したハイボールのジョッキを持ち上げた。
私と、なぜか美香もワイングラスを持ち上げて
不思議な関係の成立に乾杯した。
向こうの方で石島さんを呼ぶ声がして
「ごめん。ちょっと行ってくる」
と、向こうに行ってから
私と美香は顔を見合わせた。
「何・・・この展開?」
視線は石島さんに向けたまま美香が私に言った。
「私も分からないよ・・・」
大学時代はただ憧れているだけだった石島さん。
確か2回ぐらい、サークルで夏の合宿に一緒に行ったっけ?
飲み会はいつも一緒に行ってたけど
あまりの人数の多さに
個人的に話したことなんかほんの数回だ。
しかも挨拶程度。
そんな石島さんと「目的があるとはいえ」個人的に会う事になろうとは。
「由香里。チャンスだよ」
どんなチャンスよ・・・