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籠鳥 〜溺愛〜
【女性向け 官能小説】

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6章-1


(ね、眠れない――)

 ただ今午前5時。

 しかも今日だけでない、昨日の夜も眠れなかった。

 元々寝つきは良いほうだったのに、急に不眠症になってしまった。

 原因は分かっている。

(同じ屋根の下に、鏡哉さんがいると思うと、眠れない――)

 鏡哉が好きだと気づいてから、美冬は彼の一挙手一投足にびくびくと反応していた。

 恋煩いなのか胸がいっぱいで、食事もあまり喉を通ってくれない。

 するとSっ気を出した鏡哉にいいように玩具にされ、キスのお仕置きをされるのだ。

(ふ、不整脈で死んじゃう……)

 ごろりと寝返りを打ち、まぶたを閉じるがまったく睡魔は襲ってこなかった。

 カタン。

 リビングのほうから音が聞こえる。

 時計を確認すると5時半だった。

 鏡哉はたまに早く目を覚ますことがあるのだ。

「もうどうせ眠れないし、ご飯作るかな」

 美冬は睡眠を諦めて、ベッドからのろのろと這い出した。

 鏡台の鏡に映った自分を見つめる。

 さすがに隠せないクマができてきている。

 美冬は化粧品などは色つきリップ以外は一切持っていないので、化粧で隠すこともできない。

(このままだと鏡哉さんに心配かけちゃうし、帰りにコンシーラーでも買おうかな)

 ちょっとふらふらする頭をふると、美冬は制服に着替えて部屋を出た。

 鏡哉はキッチンでコーヒーを入れているところだった。

「おはようございます、私が入れますよ」

「おはよう、美冬ちゃん。いいよこれくらい、自分でするからまだ寝てて――って」

 美冬を振り向いた鏡哉がそう言いかけて目を見開く。

(……?)

「どうしたのそのクマ。それにめちゃくちゃ顔色悪いよ」

 とっさに俯いた美冬の顎をとらえ、鏡哉が問い詰める。

 強引に顔を上に向かされ、まじまじと見つめられるのが恥ずかしい。

「ちょ、ちょっとだけ眠れなくて……」

 鼓動がどくどくと加速する。

「可哀想に、可愛い顔が台無しだ」

 顔を寄せてくる鏡哉から美冬は焦って目をそらす。

(お願い……それ以上近づかないで。じゃないと、私――)

 頭に血が上り、ずきずきと頭痛がする。

「今日は学校休んでゆっくり休みなさい」

「だ、大丈夫です」

「駄目だ。学校に電話しておくから」

 そう言って鏡哉が美冬から手を放した途端、美冬はぐらりと体が傾くのを感じた。

「鏡哉さ――」

 どんどん目の前が真っ暗になっていく。

「――ちゃん!?」

 鏡哉の声が遠くに聞こえる。

 そうして美冬は鏡哉の目の前で倒れてしまった。







 目の前で美冬が崩れ落ちていく。

 鏡哉はとっさにその体を受け止めて顔を覗き込んだが、美冬は意識を失っているようだった。

「美冬ちゃん!?」

 真っ青な頬をぱちぱちと叩いてみるが意識を取り戻す兆しがない。

 鏡哉は美冬を抱き上げると一番手近な自分の寝室に運び込んだ。

 キングサイズのベッドに横たえると急いでリビングにある救急箱から体温計を持って戻った。

 紺色のスカーフを解いて、一瞬躊躇したがセーラーの襟を解く。

 露わになった白い肌が眩しかったがなるべく見ないようにして、脇に体温計を挟んだ。

 すぐにピピピと鳴り体温計を抜くと、38度も熱があった。

 一緒に暮らしていて知ったのだが、美冬は平均体温が低く35度台だ。

 その美冬にとって38度というのはとてつもなくしんどいのではないかと、鏡哉は焦る。

 時計を確認するとまだ6時だった。

 鏡哉は携帯電話を取出し高柳に医者の手配を指示すると、困惑して立ち尽くした。

(な、何をすればいいんだ?)

 産まれた時から使用人に傅(かしず)かれ、当たり前だが他人の看病などしたことがない。

「と、とにかく熱を下げよう」

 先ほどの救急箱の中に冷えピタが入っていることを思い出し、とって戻ると額に張る。

「次は着替えをさせて」

 美冬の部屋に行きクローゼットからネグリジェ型の夜着を取り出し戻る。

「ごめん、美冬ちゃん。着替えさすだけだから」

 鏡哉は口頭で詫びを入れると、美冬のセーラーを脱がしにかかる。

 上半身を起こして上を脱がすと、キャミソールとブラだけになる。

(ブラ……キツイよなあ)

 少し罪悪感に苛まれながらキャミソールの上から器用にホックをはずす。

 悲しいかなこういう時に手間取らないのは、大学時代に女性関係が派手だった所以(ゆえん)だ。



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