それぞれの思惑-6
どの男も、びっくりする程大きく腫らせた怒張を誇示するかのようにおっ立てている。
そして龍也と真琴に気がつくと、彼らは口々に挨拶がてら言葉を投げかけた。
「龍さん! 今日は可愛い娘連れてるねえ」
「この娘が、新しく発掘したって娘かい?」
「信じられねえくらいの上玉じゃねえか! よくこんな娘が釣れたな!」
「次はこの娘をいただくよ。 後で予約入れとくよ」
「お嬢ちゃん、待ってな・・たっぷり調教してやるからなぁ。 ・・こりゃあ楽しみだぜ!」
いかにも精力旺盛そうな脂ぎった中年男達は、二人の前を悠然と通り過ぎると、廊下の突き当たりにあるエレベーターに乗り込んだ。
「ウゼえな・・ハゲブタオヤジ。 まだテメーらにハメられるほど安売りしてねーよ」
真奈美には聞かせたことの無い、ドスの利いた汚い言葉が真琴の口から漏れた。
「クハハッ! 真琴、よっぽど頭にきたか? 地が出てるぞ・・! ま、オレは昔のオマエが好きなんだがな」
「しッ! 黙って、リュウ。」
彼らが出て行った後、開け放しになったドアの中から、うめき声のようなものが聞こえる。
その声の主を確かめようと部屋の中を覗き込んだ真琴の前に、自分とさほど歳は変わらないだろう、全裸の若い女性が両手両脚をロープで縛られ、エビ反りの姿勢で吊されている姿が現れた。
「あ・・ あわあ・・ あううあ・・」
その女の舌は割り箸で挟まれ、舌の先にはピアスが3個取り付けられていた。 血が滲んでいるところを見ると、ついさっき貫通したばかりのようだ。
しかし呻きを上げる理由は、舌先のピアスだけではない。 彼女の全身には、おびただしいミミズ腫れとすり傷が無数に付いている。
特に両の乳房、双臀は赤く腫れ、所々内出血を起こしたのか赤紫の痣が出来ている。
「だ・・ だずげで・・ あ・・お・・おね・・がい・・ あた・・しを・・」
焦点の定まらない目、憔悴した表情。 舌が不自由なまま、譫言のように呟く呻き声。 過酷なまでの拷問のような調教に耐えきれず、精神崩壊を起こしてしまったのか。
もうこの娘は助からないのだろう・・真琴はそう思った。
「それにしても・・妊娠してるのか? この下腹部の不自然な膨らみは・・」
真琴はその腹を持ち上げるように下から支え、触診で確かめようとした。
「んっ・・ んんんっ・・ はぐああ・・」
ブリュリュ・・ ビュバァッ!
女性は苦しみの表情を見せたかと思うと、まるで失禁したかのように股間から液体をひり出し、床にばらまいた。
「うっ・・ なんだ、精液が詰まってたのか。 この姿勢で何度も中出しされたんだろうな・・」
真琴は少し眉をしかめながら呟いた。
「最初はおだてられ、もてはやされてここでデビューを果たす。 色んな客の相手をさせられ、散々食い物にされ、やがて使い古され人気が落ちてくればランクも下げられる。
そして性奴隷、肉便器へと堕ちていく。 丁度この娘がそうだな。 更にスカトロ、拷問を経て、最後に行き着く先は獣姦モノだ」
自慢したいのか、怖がらせたいのか、いつもながら龍也はベラベラと良くしゃべる。
「もおいい、分かった分かった。 上のランクに入りたかったら、オマエにゴマすっとけって話だろ」
「フッ・・さすが頭脳明晰、真琴は優等生だな。 物分かりが良くて助かるぜ。 あいつらが帰ってくるまで、暫くこの部屋で楽しもうぜ」
「好きにしろ・・ ただし、まだオマエらに負けるとは思ってねえからな」
龍也はズボンを下ろし、テントを張っているブリーフから自慢の息子を引っ張り出した時だった。
ガチャリ!
沙夜子のいる部屋のドアを開く音が聞こえた。
「龍也、出てきたよッ!」
「おい、待てって・・せっかくテンション上がってんだからよお、一発やらせろ!」
「もお、後でだ、後で! 早く仕舞え! そのデクの棒を!」
沙夜子の部屋から出てきた三人の男達も、さっき別の部屋で女性を吊したまま出て行った男達同様、下半身を露出させている。 そして廊下へ出ると、そのままエレベーターへと向かって歩いて行った。
「あいつら、どこかで休憩なのか?」
立派になったムスコを渋々仕舞っている龍也に、真琴は素っ気なく尋ねた。
「隣のビルだろ。エレベーターで3階に上がれば、フロアが繋がってる・・」
ふて腐れたように、口を尖らせて龍也が呟いた。
「隣のビルって・・遊郭楼のことか? あそこもオマエらの系列だったのかよ・・」
「ああ、ビル全体が総合歓楽センターになってる。 ただし3階はVIP専用なのさ。 サウナやバーが完備されてる」
「ふうん・・ オマエらの裏商売の会員は、VIPなら遊郭楼も使わせてるのか」
「ていうか、遊郭楼のVIPルームで着替えや支度をして、ここでプレイするのさ」
龍也と仲良くしていれば、ばか正直にここの情報を喋ってくれる。 真琴は、龍也が自分に気があることに感づいている。 もちろん体が目的だが、出来るだけ小出しにしながら、より多くの情報が得たい。
「なるほど、分かった。 じゃあ、沙夜子の部屋へ入らせてもらうよ」
真琴は、いそいそと沙夜子の部屋へ入っていった。 部屋の照明は消されており、中が暗くてよく見えない。 おまけにタバコの煙が充満しており、少し霞んでいる。 何より、精液特有の生ぐさい臭気が鼻をつく。
「照明はここだ」
龍也が壁のスイッチをパチンと押した。 部屋の四隅の燭台のような壁掛け照明がぼんやり灯り、部屋を赤く染める。 すると壁という壁に、所狭しと掛けられているSM道具が照らし出された。