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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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勇気ある撤退-1




   ◇   ◇   ◇



楽しいはずのバーベキュー、一体誰がこんなお通夜みたいになると思っただろうか。



バーベキューコンロの上で、肉の焼ける音だけが他人事のように食欲を駆り立てる音を放っていた。


こんな状況にしてしまったのは、紛れもなく俺のせい。


一番隅の折り畳み椅子で、小さくなっている俺は、紙皿の上のこんがり焼けた肉をただ黙って見つめるだけ。


「ほら、まだまだ肉はあるんだよ」


この空気を変えようと、無理矢理明るい声を出しながら、トングで焼けた肉を挟む歩仁内は、みんなに食べるよう促すけど、返事が返ってこない。


皆は俯いたまま、自分に割り振られた肉や野菜をちょびちょびつまんでいるだけだ。


さすがに見かねた本間さんが、


「あ、じゃあ私ちょっともらうよ」


なんて言って、歩仁内に頼んで皿に肉を乗せてもらうけど、まるで箸が進んでいない。


明らかに、歩仁内を気遣っての優しさなんだろうけど、二人がいつも通りに振る舞おうとすればするほど、空回りしているようだった。


――その傍らでは。


俺と喧嘩をした修にどう話しかけていいのかわからず、ただ気まずそうに俯く石澤さん。


俺が泣いたことにヒいたか、罪悪感があるのか、ただテーブルに頬杖をついて、難しい顔で黙り込む修。


「ちょっとゴメン」と席を外した州作さん。


そして、テーブルの隅で膝に手を置いたまま顔を上げない沙織。


こんな辛気臭い状態、いつものみんなじゃ考えられない。


それもこれも、みんな俺のせいなんだ。


歩仁内が本間さんに話を振って、少しでも場を盛り上げようとするけれど、やはりみんなが黙っているせいで、尻すぼみになるだけ。


この状態に、罪悪感がますます募っていく。


……俺がいなくなれば、少しはこの張り詰めた空気も和むんじゃないか?


沙織を傷つけ、修を怒らせ、みんなをドン引きさせ。


全ての諸悪の根源は俺なのだ。


ならば、席を外すのは、州作さんじゃなくて俺じゃないのか。


さすがにここから帰ることは不可能だけど、体調が悪いとか適当なことを言って、俺が一人部屋に戻れば、きっとみんないつもの調子に戻るはず。


この重苦しい空気の中で、ようやく答えを出した俺は、静かに紙皿の上に割り箸を置いた。








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