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飛べない鳥の飛ばし方
【ファンタジー 官能小説】

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始まりの泉-4


「大丈夫!落ち込むな!」

 不審人物はそう言うと女の子から手を離し、代わりに彼女の両脇に手を入れる。

「きゃっ」

 ひょいっと持ち上げられた女の子は、気がつくと不審人物に肩車されていた。

「これなら大丈夫だな」

 確かに他の人々より高くなったが、目立つしミニスカートだし……恥ずかしい。

「あ、あの……」

 女の子は赤くなって自分の股の間にある青い耳をちょいちょいと引っ張った。
 しかし、不審人物は全く気にしないで勢い良く女の子を見上げる。

「なっ!」

 しかも、ナイスアイデアだろうと得意満面な顔。
 女の子は困ってしまい助けを求める様に周りを見回した。
 周りの人々は見てみぬふりか、クスクス笑っているかのどちらかだった。

「ぁ……の」

「えっと、後ろ向きになるんだよな」

 女の子の戸惑いなど気づかずに不審人物はくるんと身体の向きを変える。

「わきゃ」

「おいおい、しっかり掴まってろよ」

「ご、ごめんなさい」

 振り回されてバランスを崩した女の子は慌てて不審人物の大きな耳を掴んだ。

「ん」

 女の子が落ち着いた所で不審人物は綺麗なコインを渡す。

「願い事はいつするんだ?」

 投げる前か、それとも後か、と聞く不審人物に女の子はコインを受け取りながら答えた。

「ぁ、えっと……投げてからお願い事して、コインがちゃんと泉に入ったら叶うらしいの」

「そっか。じゃ、しっかり狙えよ」

「う、うん」

 女の子はコインを握って気合いを入れる。

「い、いくよ」

「おう」

 不審人物は女の子が落ちないように彼女の太股をしっかりと腕で抱えた。
 女の子は何度か狙いをつけた後、ポーンとコインを投げる。

「〜〜〜〜〜っ」

 同時に両手を組んで願い事をブツブツと唱えた。
 不審人物はそっと向きを変えて飛んでいったコインを目と耳で追う。

ぽちゃん

 目の端でコインが泉に入ったのを確認し、耳でもしっかり水音を聞いた不審人物はパッと顔を上げた。
 女の子はまだ願い事を必死に唱えている。

「おい」

「〜〜〜〜〜〜」

「おいっ」

「〜〜〜〜〜〜」

「うおいっ!」

 声をかけても無反応な女の子に対し、不審人物は身体を揺らす事で現実に戻させた。



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