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エスが続く
【OL/お姉さん 官能小説】

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3. Softly, as in a Morning Sunrise-5

「ま、何でもかんでも開けっぴろげにしたら、恥じらいっつーか、そういうもんが無くなっていくんじゃん?」
「恥じらい?」
 崩れていた悦子がまたむっくりと体を起こした。「恥ずかしい、って、いっつもなってるよ?」
 何なんだよ、この女! 美穂は悦子の恥ずかしがる姿を想像しそうになって溜息をつき、ついさっき運ばれてきた海鮮盛り合わせを網に並べ始めた。




 五月になると新入社員が配属されてくる。悦子の部門にも入ってきた。
 大きな案件は任せられないが、半年経って平松はいくつかの得意先を一人で担当するようになっていた。それだけではない。社内のメンバでも客先の人間でも、特別面白い話はできなかったが、雑談もできるようになっていた。悦子と付き合い始めて豹変した。豹変しようと意図的に頑張り、半年の間に目に見えて成長してくれた。
「いやぁ、見事に育ったねぇ。さすがはゴンちゃん、彼のヤル気スイッチをちゃんと押してくれたな」
 期末の考課面談で部長に絶賛された。すみません、変なスイッチも押してしまいました。平松が変身した本当の理由を胸の中に押し止めるとじんわりと胸が疼いた。いつまで関係を隠し続けるのだろう。こんなに時間が経ってしまうと言い出そうにも言い出せない。しかし昼間は上司と部下としての距離を保ちながら、お互い仕事に邁進し、時には平松を真面目に厳しく叱責する、その切り分けができているからこそ、夜に二人きりになったとき思い切り甘えるととてつもなく芳しい気分に浸ることができるのだと思った。社内でイチャイチャ、ムラムラしてたら到底仕事にならない。いや、実際そんなのはしないけども、気分的に。結局は、今の関係を続けるのがベストなんだ、と悦子は努めて考えるようにしていた。
 新入社員が悦子の下に付くことは誰の異論もなかった。正直、仕事ができない人間の面倒を見ながら職務に当たる苦労は平松の時に思い知っているから、次は勘弁して欲しいと思っていた。だが、部下が育たないと上司の仕事も楽にはならない、と常々部長に言われている言葉は真実だし、平松ほかの部下に仕事を委譲していくことは、中長期的に見ても彼らのためだけではなく自分自身にとってプラスであると思った。
(ま、平松以上にヒドいのは来ないでしょ)
 自分の彼氏だが客観的な評価だ。あれはヒドすぎた。あれ以下はなかなか来ないと思うが、どんな子が来ても下手に身構えないでコミュニケーションを心がければいい。二年目に突入して、チーフとして余裕が出てきたな、私。
 だからGW明けに部長に連れられてやって来た子を見て、あ、女の子なんだ、という程度にしか思わなかった――、と言えばウソになる。例年のイベントとしてなるべく客先に出ずに新入社員を迎えるようにするから在社の者が多い中、ドアが開いて部長連中と一緒に初々しい面々が入ってくるとフロアがザワつく。やなんだよなぁ、これ。悦子は自分が配属された時のことを思い出していた。皆が自分たちをチラチラと見ながらコソコソと話す。中でもゴンちゃんは輝いてたけどね、当時課長だった部長が思い出話でそんなことを言ったが、どうせ気の強そうな女が来たなぁおい、くらいに思ってたんですよね、と言ったら苦笑いをされた。思ってたのか。
 去年のトラブルは大きな損失までには至らず、気の毒ではあったがお陰で一回り成長して戻ってきた前の席の女の子が、各島へ散っていく新入社員、特に男性社員の質に舌打ちをした。
「舌打ちしないの」
 笑いながら小さな声で咎める。部長が近づいてきて自席の前で、
「ほい、じゃ、ちょっと集合ー」
 と言った時に一緒に足を止めたのが女の子の新入社員だったときにもう一度舌打ちが聞こえてきた。だから舌打ちしたら可哀想だってば。自分がされて嫌だったコソコソ話を、いざ迎える側に立ったら毎年してしまっているのを心の中で謝りながら部長席の方へ歩を進めていく中、前の座席の女の子が思わず舌を鳴らしたのも少し分かる気がした。
 両手を前に結んで立った女の子は、入口から歩いてくる道中、明らかにフロア内の男連中の目を引いていた。輝くってのはこういうことだ、と集団の中で明らかに容姿が際立っていた。自分の島の前を通り過ぎた男たちも、自分の島に来る前に立ち止まってしまった男たちも目に見えて落胆していた。馬鹿どもめ。前に立つ女の子は口元に少し笑みを湛えて凛然と立っていた。リクルートスーツではない、洗練されたグレーのフェミニンスーツ姿。まぁ、リボンブラウスが似合いますこと。スタイルもいいし、スカートの裾から覗く素足が瑞々しい。ブラウスに隠れているが、ジャケットの合わせの曲線から見て細身のくせにかなりの巨乳っぽい。それがまたこのスタイルの着こなしを格上げしている。中学校ではないので、人とは違う服装でも、ビジネスラインを失していなければ裏に呼び出して囲まれるようなことはないが、明らかに他の女子新入社員を出し抜いているように見えた。平巻きにしているヘアスタイルも、キュートなメイクも可愛らしい顔立ちに見事にマッチしている。目大きいなぁ、睫毛も時間かけてるなぁ、これからも朝にそんなに時間かけて身だしなみ整えれるかなぁ、と余計な心配をしながら、これから部下になる女の子を鑑賞していた。


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