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エスが続く
【OL/お姉さん 官能小説】

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3. Softly, as in a Morning Sunrise-18

 誰かが履いているフレアスカートでなくとも、後ろから裾を捲りあげるスカートがタイトなほうが欲情するに違いない。あそこまで大きくはないが、三十越えても好スタイル維持の一端を担っているバストの形の良さと張りはさぞ触り心地良い筈だ。別の女を知らなくても自分一人で充分なんだ。
「好き……?」
「うん」
 ストレスを溜めている悦子がやたら気持ちを伺っても弱い耳元で熱っぽく囁いてくれる。好きなら浮気なんかする必要ない。どれだけビックリするような要求も応えてやる気構えがある。どれだけ淫猥な行為をはたらこうが、恋人同士だ、頭の先まで愉楽と愛しみに浸らせてくれるなら、タスクフォースでの煩悶までも逃して来週また頑張る活力を与えてくれるだろう。
「毎日大変そうだね」
「ん……、もう、アイツ、ほんとやんなる」
「俺がリーダーなら全部悦子に任せるのに」
 耳元で囁かれると、悦子は可笑しそうに笑って、
「そりゃそうだ。任せてくれなきゃ私が心配だ」
 と、体を弄られつつじゃれていると、何度もキスをしたくなる。明日は土曜日だ。ウダウダとちちくり合っていても時間は気にする必要はない。
「ひどいよ。俺も悦子のお客さん、ちゃんと頑張ってるよ」
「うん、そだね。それは褒めてあげる」
「木枝さんも、客先のウケいいよ。頑張ってる」
 彩奈の話は聞きたくなかったが、じゃれあいに水を差したくもない。新入社員に対する単なる所感だと心の中で言い聞かせながらも、
「そう? 良かった。……新人さんなんだから、あんまり変なことしないでね?」
 思わず口をついて出てしまった。
「変なこと?」
「んー……、わかんないけど。私の悪口とか」
「そんなの言うはずないじゃん」
(そうだよ、彼女の悪口言って憐れがらせて浮気しようなんて最低だからね)
 彩奈は二人の関係を知らないのだから取れるわけない手法だったが、悪い想像は簡単に悦子の頭の中に垂れ込んでくる。二人で移動する時どんな話してるんだろうな、ゲームの話とかしてるのかな、九重彩奈について熱く語っちゃってんのかな、木枝さん内心ドン引きしてたりして。
「あのさ、悦子」
 やめようとしても浮かんでくる彩奈の想像に囚われていると、少し真面目な声音で平松が囁いてきた。
「ん?」
「木枝さん……、ちょっと悩んでるかも」
「え?」
 悩みを相談するような仲? 担当の新入社員の悩みよりもそちらがまず頭に浮かんだことに自分が嫌になった悦子は慌てて、「何? 悩みって」
「……んー、何か木枝さん、ちょっと心配してる」
「何を?」
「『私、ひょっとしたら権藤チーフに嫌われてるかもしれません』って……」
 平松の腕の中でビクッと体を打ち震わせてしまった。美穂に言われて彩奈に対する対抗心を持たないようにしようと心がけていたのに、無意識のうちに彼女にそれが漏れていたのかもしれない。彼女にとっては理由は皆目検討つかないだろう。三十路女の汚らしい嫉妬だ。
「そんなことないよ。……木枝さんに勘違いされてるのかも……」
 平松も気づいている? 気づいて欲しいし、気づかれたくない。若干震えた声で否定した悦子は、平松の唇に振り向けていた顔を正面に戻して、焦っているか、あるいは嫉妬が滲んでいるだろう顔を見られないようにした。
「だよね。悦子って、そんな人じゃないと思うし」
 そう言われると余計に身が軋む。
「……うん、誤解、解かなきゃね」
「俺の時みたいにさ、飲みに連れて行ってあげたりとかしたら?」
「私、しばらく忙しいから……。あんたが一緒に行って解いてきて」
 平松に対する悦子の誤解は飲みに行って解かれた。そして結ばれた。飲みに行って親睦を深めたら、女は落とせると思ってる? 本心ではなかったから、体を弄られている途中なのに翔ちゃんではなく、あんたと呼んでしまった。
「そう? そうしたほうがいいなら、そうしようかな……」
 もう限界だった。彩奈の話はやめたい。悦子はバストを弄っていた平松の手首を掴むと、タイトスカートの裾いっぱいまで脚を開いた間に導いて催促した。もし飲みに行って彩奈が酔っ払ったら、酒の強いあんたはどうするつもりだ?
「悦子」
 熱っぽく囁いた平松がスカートの裾をたぐりながら手を進めてくる。「……して欲しいこと、あるんだけど」
 そう言われると胸が高鳴る。平松に要求して欲しいと思っている。何でも応えたいと思っている。
「ん? ……なに?」
「着て欲しい服あるんだ」
「……。……この服じゃイヤ?」
 ショッピングサイトで見たフェミニンなスタイル。誰かと同じような恰好をさせて情欲を満たそうとしているのかと、再びの懸念が湧き起こって、「可愛らしい服、持ってない」
「ううん、違うよ」
 平松が悦子を残して立ち上がると、平松の鞄と一緒に部屋の隅に置かれていた紙袋を手にとって戻ってきた。「もっと……、コスプレっぽいんだけど、だめ?」


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