ビーチの罠-1
「ねぇ、あなた?海に婦人会で行くんだけど、やっぱり婦人会って言っても私一人でそんな海なんて行って、水着になるのはまずいわよね?」
「お前の水着なんてもう誰も見ないさ。行きたいなら行けばいいよ」
ある晩、美佐子が浩平に聞くと興味がなさそうな夫の返事があった
『だったら行ってきますね』
美佐子はある計画の実行を決心した
…………
"佐賀の呼子の方にヌーディスト達が集まるビーチがあるらしいですね"
9月の残暑が色濃く残る晴れ渡ったある平日の日、チャットの向こう側の男が買い込んだ
ショッピングセンターの一件以来、美佐子は過激な内容は自粛し、今日は露出妄想をこの男と話している。
九州に住んでいることを言うと男が言ってきた。
詳しい場所を聞くと場所のイメージはついたがまさかヌーディストビーチになっているとは知らなかった。
"機会があればいってみて、感想を教えて下さいね"
そこで会話が終了した。
数日後の晴れ渡った平日の正午前、時刻は11:00過ぎだった。
美佐子はもう20年以上も前に買った黄色のビキニを取り出し、着てみた。
クレバスは潤い、尖った乳首はすでに浮き出ている。
水着の上からクレバスをなぞると声が漏れる
「ぅぅん!」
いつもならこのままオナニーにふけるところだが、我慢し、水着の上からゆったりしたワンピースと更にその上からパーカーを着て、タオルや着替えの下着などをバッグにつめ、思いつめるように車に乗り、佐賀に向かっていた。
西九州自動車道を抜け、1時間半ほどで呼子に到着した。
教えてもらったビーチは公園に面していて、公園の駐車場に車を止め、バッグを手に向かうとそこは生活水の排水溝に隣接し、お世辞にも綺麗とは言えず、ゴミも多く落ちていた。疑いながらビーチを歩いているとパラソルがいくつか見えた。
『こんなところが?』
パラソルを目掛けて歩くと美佐子は違和感を感じ、またビーチにいる男性たちからも受けたことのない敵意のような視線を感じる。
着替える場所もなければ、腰を下ろす場所もなく、どうしたものかと困っているとパラソルの日陰に入れるデッキチェアに寝ている男が声をかけてきた
「よかったらそこに座りますか?空いてますよ」
隣にあるもうひとつのデッキチェアを指差した
「良いんですか?」
「かまうことはないですよ。どうせ俺のでもないし、誰も座ってないし。ここのルールで誰も座っていなければ座ってよしってね」
「そうなんですか・・・。では、お言葉に甘えて」
「どうぞ、どうぞ」
他に座る場所もなさそうなので美佐子は座って羽織っていたパーカーを脱いだ
「ここにはよくくるんですか?」
「たまにかなあ。土日が仕事なもんで平日の休みで何にも予定がない時はこうやってのんびりしてますよ」
「そうなんですか。私は初めてなんですよ」
ワンピースを脱ぎ、日焼け止めを塗りながら世間話をする美佐子の豊満なバストを男は食い入るように見た
「ひょ〜、でけ〜。・・・こりゃ、失礼」
美佐子は飄々とする男のぶしつけな態度に少しむっとしながら
「ひとつ聞いても良いですか?」
「ひとつでも、ふたつでも」
「初めて来たんですが何だか私嫌われてるんですかね??皆さんの視線が冷たくて・・」
「うん、嫌われてるよ。多分。っていうより確実に」
「え?」
想定したよりも違う返事に戸惑う美佐子に男は続ける
「だってここはゲイが多いからねぇ。・・・女一人って言うのは珍しいからね。敵意もあるだろうな」
美佐子はさっきの違和感をやっと理解した。ビーチには男性ばかりで女性がほとんどいなかった。
女性はいるにはいるがカップルばかりで、後のほとんどが男性同士のカップルだった。
しばらく当たり障りのない会話から、男は健二といい、年齢は36歳でフリーのライターの傍ら、バーテンをやってるといった。
「じゃ、健二さんもゲイなんですか?」
「ははは!!俺は違うよ。ストレート。地元がこのあたりだから昔からいるだけ。ちなみに昔はこんなゲイのたまり場じゃなかったよ」
「へぇ・・・」
「ところでどうして福岡からわざわざこんな寂れたところまで?」
どう答えればいいか迷った美佐子は核心をごまかしながら正直に言った。
「実は知り合いからここがヌーデイストビーチだって聞いて」
「あぁ〜・・・そういう噂もあるよね。って実際いるしな。今日も1/3くらいはそうなんじゃない?男の裸を見てもあんまり楽しいものじゃないので見ないようにしているよ、俺は」
見渡すと確かに全裸の人がちらほらと。
ビーチ自体には30人ほどしかいないが、その中で全裸なのは10人くらい。
女性は2人だけ。美佐子と同世代か少し上っぽい人と50歳を超えそうな人だった。
「確かに・・・」
「でもどうしてヌーディストビーチなんかに?露出好き?」
「どんなのなかなぁって気になって。人生経験にって」
「だったら脱げば?一応ここに座っていればあいつらもちょっかいを出してこないし」
ゲイのカップルを見ながらいう健二の言葉にて美佐子の心は揺れ動いた