白雪の問題=憲の問題-3
「そ、そこまで言わなくても……」
「まぁ、一番酷いのは、白雪が何で憲が怒ったのかわかって無いとこだが」
うぅ……。
「わ、わかるのか?」
「わからない方がオカシイと思うが……。白雪、憲は…お前がラブレター貰ってた事をお前が『自分だけの問題』だって言ったことにキレてるんだ」
…………。
「アンタ達は正真正銘の恋人でしょう?しかももうすぐ付き合ってまる一年……なのに、彼女がラブレター貰ってる事に対して『アンタには関係ない』みたいな発言されたら、怒るに決まってるわよ」
そうか……アタシがあんな事を言ったばっかりに……。
「アタシは……違うと思うな」
「愛里……どういう事?」
「太田くんは…多分怒ってないと思う」
「あぁ…俺もそう思う」
「独も…どういう事だ?」
「アタシ、たまたま見たんだけど、太田くん……なんかとっても悲しそうだった。多分……傷付いてるんだよ」
……………。
「だいたい、憲は滅多に本気で怒らないからな。反面、キレたらすげぇ恐いけど」
「どんな風に…?」
高坂の言葉に思わず反応してしまう。憲の事になると知りたくなる。悪い癖……なんだろうか?
「普通はキレたら、大声挙げながら追い掛けたりするだろ?」
まぁ、キレるって事自体、理性がなくなってる事だからな。
「憲も追い掛けるのは変わらないんだが、憲が恐い所は……キレたら、無表情になる所だな」
「ど、どういう事?」
「言った通りさ。マジで無表情になって、相手を追い掛け回すんだ。あれはマジで恐かった……」
…………。
「まぁ、何にせよ、今のアイツは多分どうして良いかわかんないんだぜ。矢城が憲を想って隠してた事もわかってるし、かといってあんな事言われて傷付かずにいられる程、神経太くないしな」
「……とりあえず言える事は、謝るしかないって事ね」
「あぁ、それが一番早いし、確実だと思うな」
謝るって、口聞いてくれないんだぞ?……でも、アタシが悪いんだもんな。
しっかり謝ろう。憲が許してくれるまで、何度でも……。
だって、アタシには憲しかいないんだから。
数日チャンスをうかがったが、なかなか人生はうまくいかないものだ。麻衣たちからの取り調べからも、変わらず憲はアタシを避けている。
困った事に、そんなアタシ達を見たり聞いたりした輩が、ついにアタシ達の『破局説』なるものを噂し始めた。
まぁ、確かに半分そんな感じなっちゃってるから、アタシはもうハラハラだ。
しかも、下駄箱に入る郵便の数がうなぎ登りになってきたので、更に頭が痛い。中には、恐らく去年フッたであろう二年からのもあった。まぁ、名前も顔も全然覚えてないけど。
こんな事態ではないなら、まぁ返事ぐらいはしていたろうが、今はそんな暇は一切ない!
ラブレターは差出人が勇気を出して書いたヤツだから、返事してやりたいのは山々だがな。
そんなこんなで、もはや神経が擦り減ったアタシにチャンスは一応訪れた。
その日は午後から雨だった。
明日は……アタシが憲に告白してからちょうど一年になる、日。
憲との事で頭の容量のほぼ全てを使ってたアタシは天気予報を見ずに登校し、見事に足止めをくらっていた。
「はぁ……」
雨は嫌いだ。気持ちが暗くなる。今は特に。
西の空はまだまだどんよりしてるから、まだ晴れそうにない。
もう……いいや、濡れて帰ろう。
そう思って、足を一歩、濡れた地面に出した。
けど、二歩目を出す前に後ろに引っ張られた。
びっくりして振り返ると、そこには話したくて話したくて仕方なかった人がいた。