止められない番外編〜由紀と鈴香〜-4
『霞とは何でもないよ。女子の中では仲いいけど…それに好きな人いるって言ってたし。』
それが由紀だということを、鈍い彼は気づいていない。
『じゃあ、先輩。私の事どう思いますか?』
『え?どうって…』
『私のこと好きですか?』
『え?え?』
『…私、先輩が好きです。大好きです。私と付き合ってください』
と、ここまで言ったところで、テープは終わった。
作為的なストップである。
「さあ、じゃあ続きを聞こうかな〜♪由紀ちゃん自身から」
「何もないですよ!断りましたから」
事実だ。告白された後、確かに自分は断った。
その後葉月から無理やりキスをされーー舌まで入れられたーー後に、「私、あきらめませんから!」と言われたのは黙っておく。
「許さんぞ!由紀が娘達以外の女とできるなど、儂は絶対に認めん!」
「由紀ちゃん…泉と鈴香の何がいけないの…?」
「だから、付き合ってないです!」
真之助と明日香は未だに憤慨している。
何を聞いていたのかこの二人は。
だが、怒りが冷めていないのはこの二人もだった。
「ま、葉月嬢の件は今のところは百万歩ほど譲っていいとして。あと一人いるよな」
「ええ…北大路さんとの関係は根ほり葉ほり聞かないといけませんね」
「ひっ…」
殺気を纏って近づく二人に、由紀は本気で腰が抜けた。
唯一笑顔の泉に助けを求める。
「泉さんっ!助けてくださいよ!」
「何でぇ?」
「何でって…」
泉は変わらずニコニコしていたが、何やら雰囲気が違う気がする。
「私も聞きたいもん。色々とねぇ」
よく見ると口がヒクヒクと震えている。
実は彼女も大分怒っているようだ。
もはや四面楚歌となった由紀に逃げ道はなかった。
「ん…あれ?ここは…私の部屋?」
鈴香が目を覚ますと、そこはパーティーのあった居間なのだが、いるのはすぐ近くで顔を赤くして寝ている由紀だけだった。
あたりにはビール瓶や、空き缶が散乱していた。
父や母、それに泉や瀬里奈もいない。
鈴香は頭を振って、ここまでの経緯を思い出す。
…あれから由紀をみんなで囲んで、真実を吐かせるために酒を無理やり飲ませたのだ。
それにつられて自分たちも酒を飲み、いつのまにか飲み会になっていた。
比較的酒に強い由紀だったが、次々に飲まされて開始数10分で意識はもうろうとし始めた。
それからしばらくして、瀬里奈は明日は仕事だしこれから用事があるからと言って家を出た。
そして真之助と明日香は、真之助が泣き上戸になってしまってうるさかったので、明日香が部屋に連れて行ったのだ。
泉は誰よりも飲んでいたくせに、わずかに頬を染めるだけでピンピンしていた。
それなのに、
「私眠くなってきたから部屋に行くねぇ。鈴香は由紀ちゃんをよろしく〜」
と言って、部屋を出ていった。
そして二人で飲んでいたら、急に由紀が倒れて寝てしまい、鈴香も話相手がいなくなり気づいたら寝ていた。
そして、現在に至る。
「うっ…頭痛い…」
さすがに酒はまだ抜けていない。
鈴香は水を飲もうと台所に向かった。
「…ふぅ…」
台所で、水を一息で飲む。
まだ体調は変わらないが、飲まないよりはマシだ。
泉も平気な顔をしていたが、水を持っていってやろうと彼女の部屋へ向かう。
由紀は起きてからでもいいだろう。
由紀の学校は明日は創立記念日で休みで、元々ここに泊まる予定だったのでこのまま寝かせておいた方がいいだろう。
泉の部屋に行くと微かにドアが開いていた。
ノックしようとすると、
「ん…は…あん…」
情欲を含む声が聞こえた。
いつもは場を改める鈴香だったが、わずかに開いたドアがつい好奇心を誘ってしまい、部屋を隙間から覗く。
組の男といたしていると思っていたが、部屋には泉一人だった。
泉は、自慰をしていた。
ベッドの上に全裸の身体を投げだし、右手で秘部を触れ、左手で豊かな胸を揉んでいた。
ドアからだと、泉のパックリ開いた股の間にあるマ○コがはっきりと見えて、鈴香は顔を真っ赤にさせた。
泉はどんどん弄る力を込めていき、指を膣内に入れてかき回した。
時々クリを軽くこすって、そのたびに身体をビクビクと震わせた。
「はああん!いいよぉ…」
もう見るのはやめよう…
そう思い、部屋を離れようとする鈴香の耳に思いがけない声が聞こえた。
「ああっ…由紀ちゃん…」
(え!)
鈴香は思わず足を止める。
「由紀ちゃあん…いいよ…もっと私のをいじってぇ…」
聞き間違いではなかった。
姉の脳裏には由紀と情事が映っているのだ。
由紀をオカズにするなんて…まさか、姉さんは由紀のことが…
ザワザワと心を何かが浸食する。
由紀が想像だけでも泉に犯されている。
そう考えるだけでザワザワは大きくなっていく。
鈴香はそれが何という名前なのか知らない。
これ以上泉の声を聞きたくなくて、鈴香は足早に居間へ戻った。
由紀のいる居間へ…